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「通過点」無料塾レポート(〜100時間)

無料塾での100時間が終了した。

「ありのままで舞台に立つ」クラウンから始まり、「一人で演じる」モノローグ、ラバンやマスクで「キャラクターの身体」を経て、インプロでの「相手との交流」を体験し、最後は「相手と演じる」シーンワークへ。
これ以上でもこれ以下でもない、ちょうどいい時間。これだけの時間を費やしたから、うまくいったりいかなかったり、その人の魅力や壁が見つかったり、信頼を構築していくことが出来た。やはり俳優訓練は時間と環境がものを言うのだなあと思った。

この無料塾で一貫してきたのは「自立した俳優になる」こと。
だからこの日も「最後だから」ということは特段なく、シーンを演じて発表し、それぞれがそれぞれのシーンにフィードバックをした。
これはゴールではなく、単なる通過点だから。ここで過ごしたことが単なる思い出になって欲しくはない。ここでの体験を経て、それぞれが俳優としての歩みを意思を持って進んでいってほしい。

最後の時間、皆にサプライズをしてもらった。久しぶりにそんなことをされて、照れ臭い気持ちと、嬉しい気持ちと、少しだけ寂しい気持ちを混じらせて終わった。

振り返ってみると、本当にいいメンバーを選んだなあと思う。
個性的だけど、前向きで、意欲的で、挑戦的だった。
だから稽古が停滞することなどなく、常にこれまでのことを踏まえた上で先に進むことが出来た。
せっかくだから一人一人振り返ろうと思う。

ゆかは選考動画を見た時に「この子は絶対取ろう」と思った子の一人だった。真面目で、誠実で、才能もあった。ただ真面目すぎたり、それゆえに自分のことを小さく見てしまったりすることがあった。だが最後のクラウンをやった時の「私イケてない?」「私最高」と言うセリフは最高だった。そうだよ、それくらいあなたは才能あるよ。もっと輝いていいんだよ。

きろも「絶対取ろう」と思ったこの一人。一癖二癖ある工夫が面白い子だった。ただ若さがゆえ(?)の「強くあらねば」と言う虚勢が人との壁を作ってしまうことが多かった。モノローグ稽古で、一人一人に命を預けてもらうシチュエーションをワークした時、ゆかの前で「こええ」と涙を流した。その弱さが見えた時、小さな身体が一層大きな存在感を放った。強さと弱さをひっくるめた姿が一人の人間なのだから。

ごうちゃんはずっと長く一緒にやってる人。知っている人に対しては厳しめに選考していたのだけど、それを飛び越えて彼は面白かったし、演劇に対して前向きになりつつある今だからこそ、もう一度指導してみたかった。稽古場をいつも温めてくれる存在だが、舞台上に上がるとその存在感が縮こまったしまうことが多かったが、最後のクラウンで見せたありのままの姿は素敵だった。愛し愛することをOKにした時、人は舞台で輝く。

けいけいは演劇よりダンスの経験が多いが、純粋で吸収力が高いから伸び代を感じていた。セリフを使った表現に不慣れな感じもしたが、身体が利くので、身体や感覚のアプローチが効果的に響いていた。彼のクラウンとモノローグは面白かったなあ。愛される才能があるのだと思う。最後のクラウンでそれを当然のように受け取ったら、より思い切ったことが出来るようになった。

みんゆは一番若く、一番伸びたのではないかと思う子だ。最初は声優志望の若い子っぽい演技をする子で、一人で演じてしまう印象があった。だが、次第に相手と関わること、生身でぶつかることを覚えていって、印象的な演技をするようになっていた。モノローグ発表会では著者の渋谷悠から「お金取れる」の評価をもらっていて、それは自分ごとのように嬉しかった。

かばちゃんはアップスでしっかり演技も学んできている、基礎がしっかりした子だ。でもだからこその呪縛もあるなあと思って、当人がどういう演技をしたいのか迷走している印象があった。とはいえ元々遊ぶのが好きな子だったので、こんだけ遊んでいいんだよと示すと、徐々に自由にやれるようになっていった。皆の前で「どうせ愛されるし」と言えた以降の感情の豊かさも印象的だった。そうやって心身ともに自由になったら、面白いぞお。

あやかーは動きたいはずなのに動けていない印象を受けていて、クラウンで転げ回ってから確信に変わった。正しく、言われた通りにやろうとするあまり、縮こまっていた演技は、後半に行くにつれて意思を持つようになったいった。最後のシーン稽古では、自分の衝動と身体と感情が結び付いていた。照れたり恥ずかしがったりする様もなくなって、その様子の彼女には「女優」という言葉が最も似合った。

みずきは愛がいっぱいあるけど、怖がりだった。自分の気持ちがダイレクトに伝わっちゃうことを避けているような気がして、だからこそその伝え方がわかっていないような感じだった。でも最後のクラウンで「一緒に」という言葉が出た時のみずきはかっこよかった。彼の純粋さと慈愛が、一番伝わってくるような、等身大の言葉だった。

僕はというと、凄く楽しかった。が、大変でもあった。
一人一人タイプの違う俳優を、最終的に自立させるところまで持っていくことの難しさがあった。
それぞれ趣味趣向や得意苦手も違うので、「自分の考えをどこまで伝えていいものか」と悩んだこともあった。
でも、最終的にはそういう事ひっくるめて自分で判断してくれるであろうという信頼に任せることが出来た。

最後に少しやらしい話をするが、今回の無料塾では20万近くのお金を費やした。
でも、それだけかけた価値は十分にあったと思う。
僕も成長出来たし、いい人達に巡り会えた。
この投資がいずれ花開いてくれることを、勝手に祈っていよう。

ありがとう。また会おうぜ。

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