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イギリスの俳優・演出・指導者がインプロを大事にするわけ

心身を崩したり、イギリスに来たりでお休みしていたインプロアカデミーで、久々にワークショップを開催します。
俳優さん、声優さん向けのインプロWSです。インプロのパフォーマンスに向けるというよりも、演技や俳優としてのあり方や技術の向上を目指します。

インプロの脚本芝居の繋がりについては、以前もこの動画で語っているのですが、イギリスに来たことでよりその繋がりは顕著なものになりました。

イギリスで学んでいる俳優たち、指導している講師たちの話を聞くと、二言三言目にはインプロという言葉が出てきます。それはパフォーマンスのインプロを指しているわけではありませんが、即興することの大切さを俳優たちは知っています。

イマココを生きる感覚というのは、マイズナーやルコックなど、全ての演技メソッドの中核でもあります。それを得るために何をやっているかというと、どのメソッドでも即興をしているのです。台本を読み、演じる前に、俳優たちはやるべきことがあるのです。
なのになぜか、日本の養成所では早々に台本を持たせて演じさせます。早熟な即戦力がさっさと欲しいのか、演技している充足感を満たしたいのかわかりませんが、台本を読むことで自分の世界に入り込んでしまっている若い俳優が山ほどいます。
そういう俳優たちは即興したらしたで、相手と交流することよりも自分のアイデアに固執します。いかに相手より面白いか、目立つかを競うのです。そして面白かったり、目立った人は評価されます。ナンセンスです。指導する側も即興を理解していないのです。なぜならこのシステムは長い間続いており、指導する側も即興したことがないからです。

それに、インプロはマインドセットを育みます。集団創作するマインドです。全員が作品の一部として、演出・脚本・役者が横一線になります。先輩のアイデアに従うとか、ベテランがリードするとか、そんな馬鹿なことはないわけです。全員のアイデアを同等として、興味深いものを作るために協力し合うのです。
これは俳優の自主性、積極性、自発性を育みます。受身な人はそこに存在しないわけです。全員がギバーになる。演出家が絶対的支配者であった時代はもう収束を迎えているのです。歯向かえというわけではないです。自分の意見を持ち、行動する人が必要だということです。作品をより良い方向に育てていくためにです。

日本人は物事を進めるのが下手くそです。議論ばかりして先に進まない、多数の意見に依存する、空気を読んで合わせるという悪い癖があります。でもそれは、資質だからという人ことで片付けるのではなく、技術がないのだ、下手なのだと自分を見つめ直して成長させた方が建設的だし、事実そうだと思います。
心理的安全性という言葉は世の中で流行り、僕はそれを見た時「インプロで同じことをやってるわ」と既知の気分になりました。インプロの父であるキース・ジョンストンが作ったインプロの思想哲学は、なかなかその根幹を理解されてきませんでしたが、ようやく時代が追いついてきたような気がします。

「演技のための」というワークショップですが、俳優・声優として必要な在り方、技術、全てを扱い、向き合えるワークショップに出来たら良いなあと思っています。
3月から始まりますので、是非ともよろしくお願いいたします!


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