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嘘をつく人にお金は貸せない

「お金を貸して」と言われた経験はあるだろうか。
あるとしたら、自分の交友関係に問題があったと猛省するしかないのだが、俺も「お金を貸して」と言われたことが何度かある。
言われたこちらが恥ずかしくなるような話だ。

そもそも他人に借金を申し込むというのはどういう状況だろうか。簡単な話で銀行や消費者金融やカード会社が貸してくれないからだ。それはなぜか。借りた金を返していない、もしくは債務整理(自己破産、任意整理)をして間もないから。いわゆる金融ブラックというやつ。

そもそも銀行が信用しない人物に個人的に貸したところで返済することは絶対にない。俺も過去にお金を貸した人間の多くは返済するそぶりすら見せなかった。それどころか借りたことも都合よく忘れ、借用書の控えすら遺失している。誰にいくら借りたかすら覚えていないのだ。
俺も若いころはそんな失敗をしていた。恥と知ってあえてこの話をしている。

他人からお金を借りたい人間は、男も女も関係なく、様子をうかがいながら近づいてくる。
「最近支払いが大変で・・・」
「今月は本当にもう終わりかもしれない」
などと言う。
あわよくば「お金貸そうか」と言ってくれるのを期待している。そんなことを言ってもらえるような信頼関係はないのに、期待してしまうほどには頭が悪い。当然、こちらはそんなうかがいの言葉は無視する。
「大変だね」
そう言うか、あるいはこう伝える。
「働いて収入があるのにお金がないっておかしいだろ。収支を計算してやろうか。資金繰りを調えるためにアドバイスするよ」

すると面白いことに、こう言うわけ。

「そうなんだ」

笑ってしまうんだが、そういう話ではないのだろう。言ってることが全部嘘だからだ。金だけが欲しいのだ。
欲しいのは解決策ではない。目の前のお金。
では何のためにお金を貸してほしいと本人は言うのか。だいたいは真っ当そうな理由をつける。
「返済に困って生活費が足りない」
「仕事の資金繰りに詰まっている」
せいぜいそんなものだ。全部嘘だ。

じゃあ、恥ずかしくない理由なのだから自分の友達や親戚に頼んだらどう?という話になるがどうも違う様子。

「図星のことを言ってやろうか」と俺は言う。「遊ぶ金だろ」

「違う」と必ず言うが、例外はない。全員かっこつけて遊ぶ金目的なのだ。

ネットで知り合った遠方に住む貧乏な男(既婚)に会いに行くために金を借りようとするおばさん(既婚)
同伴出勤でかっこつけたいがために金を借りようとする貧乏な中年男。
風俗嬢に頼まれたお金を貸してかっこつけたいがために金を借りようとする非モテの男。
みんなそんなどうしようもない理由だ。頭が悪いので普段の言動と気軽についた嘘のせいでバレていることに気づかない。

「いや、あのね、生活費に困っていると今言っているけど、先週エステ脱毛の契約をしていなかったか?」
「金がないはずなのに昨日飲みにいってたよな?」
「金がないはずなのになぜiPhone14に機種変更した?」

全員、言葉に詰まる。

「10万円貸して、来月必ず返すから」
10万円すら工面できない人間が、なぜ来月は工面できるのか。その返済計画すら説明できない。

これが例えば俺が全面的に信用している長年の恋人であったり、家族であるなら、貸すのではなくあげるだろう。その関係性に嘘がないと思っているからだ。
嘘のない関係性では、お金に困っている理由を正直に言える。それが恥ずかしい理由だったとしても。礼儀を尽くして、あらためてお願いする。LINEで頼むなんて絶対しない。
そしてお金そのものよりも根本的な解決策を求めている。頭がまともなら絶対にそうであるはずだ。

だから一緒に解決策を考える、それまでに緊急でお金が足りない、じゃあ俺がその分は払うから早く解決できるように頑張ろうな、そんな話に絶対になる。なんとか立て直すことに成功したあとで、お金を貸した人たちは必ず返済しようとするが俺は断る。返済は必要ない。
「なぜ返さなくていいの?」と言われるが、俺は言う。「あなたは一貫して嘘がないからだ」と。「嘘をつかなかったことに俺の方が感謝しているよ」と。
信頼関係はもっと運命的なものに昇華していく。お互いに恥ずかしいことをさらけ出せるようになっていく。

それは信頼関係を長年かけて醸成してきたスペシャルな関係性だけに通用する話だ。

残念ながら、遊ぶ金目的で借金を頼んでくる人間は、日常的に嘘をついている。軽い嘘が習慣になっている。だから嘘をついたことも忘れる。嘘がばれていることすら気づいていない。
その関係性はすでに崩壊しているのだから、絶対に貸すことはない。信用がないというのはそういうことなのだ。

「アキラは人のために尽くすのが好きなんでしょ?だからお金貸してくれてもいいじゃん」
そう言った女もいたが、頭が悪いのもいい加減にしろと思う。俺に何回嘘をついたのか、俺といつ信頼関係を育てたことがあるのか。

嘘があるところ、信頼関係が育っていないところに、貢献も滅私奉公も存在しない。嘘をつく人にお金は貸せない。

表面的なチャラいものではなく、心とその人の物語の奥に潜っていくような関係性の中でしか、お金の貸し借りはできないのよ。

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