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朗読の力 【岩橋由梨インタビュー】(後編)

いよいよ今週末、7月21日(日)13:30-14:30に、中目黒の烏森住区センターで、朗読劇の発表会があります。皆様のお越しをお待ちしております!

この朗読劇の指導演出を担当しているのが岩橋由梨ラボ共同代表。
先日配信した【ラボラジオ#14】作品がそこに連れて行ってくれるでは、朗読劇の魅力について研究生がインタビューしています。とっても興味深い話だったので、多くの人に文章でも読んでもらえるように書き起こして記事にしました。

ラジオで話した内容に書き足したり省いたりしているので、ラジオのまんまではありません。新たな読み物として読んでいただけたら嬉しいです。ではどうぞ。


前編はこちら

由梨:私が接してる人は主婦が多かったのね。何か自分でやってみたい、だけどできないってずーっと思い込んでた人たちが、でも朗読ぐらいならできるかもしれないって入ってきたりするわけ

ゆきの:朗読ぐらいなら(笑)

たか:わかるわかる

ゆきの:ぐらいなら

たか:それもわかる

由梨:「だって覚えなくていいんでしょ先生」とか言われて。「いいですよ、覚えなくていいですよ」って最初言うわけ。だけどやっていくうちに、「あのさぁ」とか言って、「台本見てしゃべるのと、台本見ないでお客さんに向かってしゃべるのと、どっちが通じると思う?」って。「台本見ない方です」、「だよね〜」って。「だったら大事な言葉はやっぱり見ないでやりたいよねぇ」みたいな。そんな感じ。

ゆきの:なるほど、いいですね

由梨:で、ずーっとやっていくと、自分より随分年上の人でも、なんかこう、自分の中で塞いでる、封印してる何か領域みたいなのがあるわけですよ。でもそこ塞がなくてもめちゃくちゃ魅力的なのになぁって思ったりするの、その声聞いてて。

例えば、当時私は30代で、その人は多分50代か60代ぐらいなんだけど、子育ても一段落終えて、「もう自分の中に女性性みたいなのはもうない。あるのは人間性のみ」みたいな感じで頑張ってやってるんだけど、いやいやめっちゃ女性っぽいよ、みたいな。だからその人に、ちょっとほのかな恋心を持つ、クマにね、クマにちょっとほかな恋心を持つ役をやってもらったりして。

ゆきの:おお、そういうのも見て、文章を選んでる

由梨:うん。そしたら、最初は「こんなのできません。もう私いくつだと思ってるんですか」とか言われんだけど、「いやそうだよね。だけど人がいないからさ」とか言って、「やってくんない?」みたいな。「ええ〜」とか言ってたんだけど、その本番が終わった後に、「なんかやってよかったです」とか言ってくれたりとかね、するわけよ。

ゆきの:何かを感じたんですね。

由梨:別に好きですとか言うわけでもなく、あぁいいなぁ〜って思うだけの役なんだけど、なんかそれがすごいしみじみ良かったりとかね。なんかそういう、その人が隠してるとか、その人ができないって思い込んでることとか、なんかそういうところを、例えば自分の声が嫌いですとか、大抵女性で声の低い人が言うんだけど、割と声が枯れてる人とかハスキーな人

ゆきの:ハスキー素敵ですよね

由梨:そう。魅力的な声だなって思う人ほど、自分の声が嫌いなんですっておっしゃる方が割と多くて。で、どんなに素敵な声をしているかを、存分にこれを読んでくださいみたいな感じでマクベス夫人なんて読んでもらったりするわけ。マクベス夫人っていう悪女中の悪女が、1人でかっこよくセリフいうところを。そしたら聞いてる人がみんな「おおお!」って言うの。そしたら、本人は「え?」みたいな、「何?」みたいな。「え、かっこいいよ!」って言われて、「え、そうなの?」って。

なんかそういう風に、自分でこういう生き方だとか、こういう人だって決めてたものが、その作品によってね、作品の力で引っ張られて、その部分がふわぁっと開いていく。そういうところがね、やっぱり朗読の力なんだよね。私がなんとかって言うんじゃなくて、作品がそこに連れて行ってくれるっていうか。それはすごい面白い。

ゆきの:やっぱりその作品にも力があるんですね、その文章自体にも、やっぱり宿ってる何かっていうのがあるんですね。

由梨:ある。あと自分の相性と。

ゆきの:自分の相性と、やっぱり読んでくれる人の相性もね。

由梨:うん、だから最近はね、70代80代の人にやるのはね、もう私が作品選ばないって宣言しちゃったの。

ゆきの:そうなんですか

由梨:私が選ぶ作品は、「なんか先生わからへんわ」とか言われて。それに私が行きたいとこじゃなくて、この人たちが行きたいところに行くのも面白いし。私だと絶対選ばない作品とかを選んでくるわけ。それも面白いと思って。

今高齢者グループが2つあって、1年に1回の発表会は、私もこれはどう?って候補は持っていくけれども、その人たちも選んできたものをみんなで選ぶってことを今やっている。

ゆきの:その2つのグループはもう長いんですね

由梨:そう、もう20年ぐらい

ゆきの:じゃあご自身たちでももうずっと読んでいて。なるほど。それはいいですね、もういろんな文章を読んでこられてると思うので、ゆりさんが選んできた文章はね。

由梨:だから、そういうような経験を重ねてさせてもらったので、今、中目黒で定期的に朗読をやるようになってまだ日がちょっと浅いわけ、私としては。20年に比べたら。

ゆきの:うん、そうですよね、まだ数年

由梨:そう。人もまだそんなに安定はしてないから、その都度その都度出会った人と。上手に読むことなんて、私の中の価値はすごい低いから。この人がこの文章を読んだら面白いだろうなっていうようなものをぶつけたり。たかさんも前に言ってたけど、自分が古文を読むなんて思っても見なかったっていうような人に、古文の面白さとかリズムの良さとかに出会ってもらいたいなぁとか。なんかそういうことを今ね、中目黒の朗読ではやっています。

あと今回は、そこに初めて音楽をちょっと入れようとしてる。そういうことの可能性とか、まだまだやれることはいっぱいあるなぁって思ってやってます。

ゆきの:はい、東京ではまた今、産声をあげているところですので。朗読劇団。

たか:中目黒では朗読劇はいつからやってるんですか?

ゆきの:コロナよりずっと前ですね。コロナ中はオンラインでやってました。その前は、由梨さんが個人でここでやってましたね、ラボじゃなくて。

由梨:そうだそうだ、個人でやってたね。だからもう5, 6年やってんのかな、いろんな形で。

ゆきの:東京でも実はずっとやっていらっしゃる。その何期目かの発表会が、今度7月21日にありますので、是非。

たか:7月21日は、由梨さんが期待してることや、由梨さんにとってこんな発表会になったらいいなとかはどんな感じなんですか?

由梨:この人ってこの人らしいな、みたいな表現に、出会えたらいいなと思うんだよね。誰がやっても一緒の読み方とか、そういうことじゃなくて。これはこの人にしか読めないわとか。このセリフってこの人を表してるようだなあとか。人の文章なのに、それを読んでる人がそんな風になっちゃうみたいな、そんな風に聞こえちゃうとか、見えちゃうみたいな、なんかそういうことになったら面白いなって思う。

たか:絶対になる気がする

由梨:何それ(笑)

たか:いやいや、私がってことじゃないですよ(笑)。けどもうすでに経験してる気がする、稽古の中で。

ゆきの:だ、だ、大丈夫かな。心配になってきた(笑)

たか:なんでよー、えーでも本当にそうなんですって。自分がってことじゃないけど、面白いなぁって思う瞬間あったなって。今までお稽古の中でね。

ゆきの:ああ、それはいいね

由梨:うん、それはいいね。それは嬉しいね。

たか:自分のことで言えば、今回、1人の登場人物の言葉を2人で分け合って読むから、そこがちょっとよくわかんないですけどね。これどうすんのかなって

由梨:どうすんの?って今さら聞くの?!(笑)1人の人間の言葉を、2人で読む意味は、何?

たか:1人の登場人物に対する理解も、やっぱり読む人によってちょっとずつ違うし。表現の仕方もやっぱり違うし。これを合わせにいくのか、それとも別々で独立で行くのか、その辺は謎です。どうしたらいいかなって。イメージする人物像が同じじゃないから。

ゆきの:面白いね。

由梨:やめてよっていう言葉を、「やめてよ!」っていうのか、「やめてよぉ〜」ていうのかで、人物像違ったりするよね。

たか:そうそう。自分の中では登場人物のイメージができていて

ゆきの:2人が違うイメージをね、違う表現になってくるんだね。いやー、それを見てみたらどう感じるのかな

由梨:ねー。まぁ一人の人だってさ、いろんな面持ってるじゃん。だからいろんな側面があっていいと思うし。でも大事なところは、ここは一致させてほしいなみたいなことはもちろんあるよ。それは当日のリハーサルでビシバシ言うけどね。変わるか変わんないかわかんないけど。そこは合わせなきゃ意味ないじゃん、みたいなところはやっぱりある気はする。まぁ、どこはあって、どこはあってないのかわかんないけど。

たか:そっかそっか

由梨:楽しみだね

たか:そうですね。まだまだ謎が多いです、ゆりさんの朗読劇は

由梨:ていうか、やってないでしょ

たか:あ、最近練習してないです(笑)

由梨:やって言うんだったらいいけどさ、やってなくて言ってるからね。あともう20日もないから。

たか:ハイ、がんばります


よかったらラボラジオも聞いてみてくださいね。



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