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朗読の力 【岩橋由梨インタビュー】(前編)

いよいよ今週末、7月21日(日)13:30-14:30に、中目黒の烏森住区センターで、朗読劇の発表会があります。皆様のお越しをお待ちしております!

この朗読劇の指導演出を担当しているのが岩橋由梨ラボ共同代表。
先日配信した【ラボラジオ#14】作品がそこに連れて行ってくれるでは、朗読劇の魅力について研究生がインタビューしています。とっても興味深い話だったので、多くの人に文章でも読んでもらえるように書き起こして記事にしました。

ラジオで話した内容に書き足したり省いたりしているので、ラジオのまんまではありません。新たな読み物として読んでいただけたら嬉しいです。ではどうぞ。


たか:長年、朗読劇の指導と演出をされてきた由梨さんに、朗読劇の魅力について伺いたいと思います。

由梨:遡ること、小学校の頃ですけど

ゆきの:おお!そんなに!

由梨:そう、本読みが好きだったの。国語の教科書とか

ゆきの:教室で先生に「はい、ここ読みますよ」って順番に指されて読むみたいな、ああいうの、全然嫌じゃなかった?

由梨:嫌じゃなかった。
あと、小学校1 年生から能を習い始めたんです。能では、子役のことを子方(こかた)っていうんですが、子方はとにかく与えられた節を丸暗記して、意味もわからないまま大きい声で「そーのーとーきー弁慶はー」とか言う。それを口伝えで先生から学ぶわけ。そういうことがすごい好きでした。

で、大きくなってから大学で表現教育という考え方に出会って、そのことを教えてくださった岡田陽先生という先生が朗読劇というのをずっとやっておられて。ドラマ イン ライフ(Drama In Life)というグループで

たか:ドラマ イン ライフ

由梨:うん、人生におけるドラマ。岡田先生が作られてる劇団があって、そこには岡田先生のお孫さんから、岡田先生よりも年上の方まで老若男女いて、そこに大学4年生ぐらいから入れてもらったんです。朗読劇では、書かれている文章を脚本に書き直したりしないで、ナレーター役とか主人公役とかそういう役割だけ割り振って、文章は変えずにそのまま読む。そうすることによって、音声言語立体表現っていって

ゆきの:音声言語立体表現?

由梨:オーラル インタープリテーション(oral interpretation)っていうことなんだけど、書かれてる言語を音声で立体的に表現していく。そういうことを、ずっと岡田先生はやられていて。で、私も好きだったから読んだりしたんだけど、岡田先生はもうけちょんけちょんに「だめだ!そんな読み方は!」とか言って。「伝えるってことは、その文章をちゃんと相手に伝えるってことは、語尾まではっきり言うんだ!」とか、「動詞のところをちゃんと読まなきゃだめだ!」とか。そういう風に徹底的に伝えるっていうことを指導されて。

ゆきの:文章を伝える

由梨:うん。文章を音声にして伝える、というようなことをずっと指導されたんだよね。でそれが面白いな〜って思っていたの。で、ずっと言われたまんまやってたんだけど、いつの間にか、自分だったらこれこんな風に読みたいのになって思うようになったわけ。岡田先生はこう言ってるけど、私だったらこう読むな、とか。

岡田先生は朗読劇によく音楽をつけていたの。すごい素敵な音楽をいっぱいつけていて、もうかっこいいなぁって思ってたんだけど、ある時から私だったらこれはこの音楽をつけるなって思うようになったの。だから、あ、これは私、もし自分が朗読劇を指導するんだったらっていうところにもう視点が変わってるって自分で自覚して。

たか:それはいつ頃ですか?

由梨:いつぐらいかな? 大学4年生の時から入って、卒業して2、3年経ったぐらいかな?もうちょっとかかってたかな?あ、そんなことないね、もっともっと後だわ。26、7歳。4、5年たった頃、そういう風に思うようになって。

台本は先にいただいて読んでて、自分だったらこう読むなっていうような指導を先生がされたら、「あ、そうだよね。やっぱここあってた」って答え合わせみたいにして、お稽古の間、自分が担当する作品以外も聞いていた。聞いてなきゃいけないわけじゃなかったけど、割と私は、先生が人にどう指導してるのかっていうことをずーっと見てることが多かった。それをずーっと聞いてたかな。

ていうようなことを経て、31〜32歳で関西に帰ってきた時に、今私ができることって表現教育のワークショップか朗読だなと思った。朗読劇と表現教育を10年ぐらいやってたからね。だから、朗読劇というのをできますって、NHK文化センターに人の紹介で言いに行ったんだよね。

そしたら、朗読劇はアナウンサーの文章の読み方と明らかに違うから、こういうのがラインナップにあってもいいかもしれないですねって、私の経歴を見ておっしゃってくださって。それから朗読劇というのを始めたら、そこに来た人たちのモチベーションがすごく高くて、めちゃくちゃ反応が良かったの。すげえ面白いって言われて。単に文章を綺麗に読むっていうことじゃなくて、自分の人生をそこにどう入れていくかっていう、だから読み方は1つじゃないっていう

たか:自分の人生をどう入れていくか

由梨:うんうん

ゆきの:うーん、でも文章は決まった文章じゃないですか

由梨:そうそうそう

ゆきの:そこに自分の人生を入れてくっていうのは、みんなどうしてそれを感じるんだろうか?ゆりさんの朗読劇だと

由梨:きれいに読む正調朗読とかは、正しいアクセントで、句読点も割り振っていう、それも朗読の1つなんだけど、私はそれよりも、この文章をどう捉えたの?っていうことを聞いたりしていたの。そしたら、なんか実は悲しんでるように思うとか、それぞれ思うことがあるらしい。じゃあそういう風に読んでみましょうよ、みたいなことをやった。そしたら40代50代の人にすごい受けたんだよね。

ゆきの:ああ、生徒数グっと、上がった

由梨:うん、すごかった。え!?そんなに受ける?って思って。それよりわたし表現教育売りたかったから。別に朗読は演劇専攻でもないし、って思ってたんだけど、そっちの伸びがすごかったんだよね。そこはずーっと、31歳から途切れたことはない。

ゆきの:ゆりさんは、朗読劇という形にする時って、何かイメージになるものがあるんですか?それとも、やっぱり今言ったように、その人その人の文章の捉え方を聞いてるとやっぱりこういう世界観だなってなったりするんですか?朗読劇としてみんなに見せるとなると作品になってくるから、それを由梨さんが演出しようとする時に、どういうところからその雰囲気や世界観が出てくるのかなと思って。

由梨:最初は無我夢中でわかんなかった。一番初めに羅生門やったのかな。それをやった時まで、舞台なんか作ったことなかったわけ、自分だけでは。もちろん朗読劇のアクターはやってたけど、それはいつも言われたまんまだったし。自分で照明も作ったこともないし、音楽も自分で選んだこともなかった。それが関西に戻って初めての羅生門の舞台やるってなった時に、全部一から、当たり前だけど自分で作らなきゃいけないわけじゃん。照明どうしますか?プランどうしますか?音楽どれ使いますか?って言われるから。もう音楽1個決めるのも、自分の持ってるCDを全部引っ張り出して、羅生門は昔の話だけどジャズを入れようとか、あとバリ島のガムランをここに入れようとか、なんかそんなことをしたりとか。もうね、音楽だけで何週間もかけて全部聞いて、あ、これはここだ、これはここだって。で、この音楽かけたらこんな風に読めるし、こっちの音楽かけたらこんな風にも読めるみたいなのが面白くて。それで一気にはまっちゃったんだよね。

ゆきの:楽しかった、その作業は

由梨:めちゃくちゃ楽しかった。めっちゃしんどかったけど。

ゆきの:そういうことしてるうちに、なんとなくイメージがどんどんできてきて、あ、こっち方向だなみたいな感じ?

由梨:うん。あと、いくら私がこうって思ってても、やる人がみんな素人だからね。限界があるわけよ。

たか:確かに確かに

由梨:だから何回言ってもできない、みたいなこともあるわけ。で、「分かりました」って言ってもやらない、そうしないわけよ(笑)。で、できないんだなぁって思って。それもすごい自分の中では大ショックだった。私は、言われたら想像してできるもんだと思ってたから。最低限のことは。でもみんな、40代50 代とか、下手したら60代70代の人だからできないわけよ。

たか:最低限のことも(笑)

由梨:そう。できないし、すぐしんどくなるし。1回2回3回って稽古をやればやるほど私なんかは伸びると思ってたんだけど、高齢者の人って稽古やればやるほど落ちていったりするわけ。で、ダメなんだ、とか。自分より随分年の違う人に稽古つけるって、もう全く自分の肉体とは違う人だから。

ゆきの:自分がまだその年齢を経験してないからね。自分より年下だったらね

由梨:子供だったら全然違うんだけど。やればやるほど子供は伸び代がすごかったりするんだけど、高齢者はやればやるほど落ちてったりするから。ということとは別に、私が思ってた以上の経験値でもってそのセリフをしゃべるわけよ。びっくりするぐらいな説得力で。みたいなことがあったり。

本番は大抵みんな1回だけなの。もう2 回も3回も同じことできないから。で、稽古でどれだけ言ってもできなかったのに、本番迎えた途端に、あんた昨日までそんなしゃべり方してなかったじゃん!ってなる。みんなお客さんに聞かせるってなった途端にバンって変っちゃうわけ。だったらはじめからその稽古しようよ!みたいな(笑)。でもダメなの。本番でないと。自分がどんな声を出してるとかって意識できなくて。そういうことがいっぱい起こって、めちゃくちゃ面白かったんだよね、舞台作りが。何一つ自分の思った通りならない、みたいな。

でも一から作れるわけ。で、みんなでそこに向かっていくわけ。作品はあるから、作品が良ければいいほどそこにちゃんと引っ張られていくわけ。別に演出なんてそんな大したことしてないけど、ちゃんとその文章を読めたり、読めるというかその表現ができると、その先へ行くわけよ。みたいなことがいっぱい起こって、めちゃくちゃ面白かったんだよね。

ゆきの:由梨さんの先生もそういうのが面白かったのかな

由梨:ドラマ イン ライフって岡田先生がおっしゃったのは、多分、どんな年齢でもどんな経験をしていても、それがちゃんと声に乗っかって、誰でもドラマの中の一場面として想像できるんだ、表現できるんだっていうことのためにやっていたから。

ゆきの:いいね〜、誰でもできるんだ、表現できるんだ

由梨:うん、でもすごい結構「ダメだな、お前は!」とか言われて

ゆきの:その割にはそういうこと言うんだ。やめて〜それ。お願い否定しないで。できないなんて言わないで。いいぞと褒めて。でも、ダメだ!なんだ

由梨:うん、ダメだ!

ゆきの:コンセプトはそこなのに、ダメだ!って言われちゃうんだ。

由梨:それは本当面白かった。

ゆきの:そうか。そこがゆりさんの

由梨:そう原点だね

ゆきの:あー、原点なんですね

(後編に続く)


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