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『柚子の花から生まれてさ』

 某大会について様々に述べていた記事の伸びが良いです。少しですが、角川『俳句』で触れていただいたりするのはありがたいことです。大したことを書いたわけではないので、少し不安になっていたりしますが。トゲのない記事ではないけれど、すこしでもこれからの子たちのための過ごしやすい環境整備がなされるといいな、と思います。
 ただ、ボクはあの大会の関係者として生きていきたい気持ちは一切ありません。ボクはあくまで一人のつくり手であり(使えるものはなるべく使う派だけれど)、高校時代の経験にばかり囚われていたら、なんと狭い空間で息をしているのだろう、となる。なのでよければ、どんな奴があれを語っていたのだろうと、今のボクにも興味をもってくれる人が増えればいいな、と思います。
 まあ、自分がちっぽけだから誰かを引き止める力がないのです。取れたら嬉しい賞も、選んで欲しい選者も見つからないけれど、形式的な努力も忘れずに、欠伸は止まらないけれど、自分であるために、自分にとって不要な自分にならないために、頑張ります。
 ただ、まずは忙しい中でもnoteでの作品公開を忘れないようにしなきゃいけないんですよね。これ、投稿のたびに言ってないか? 言い訳すると、前評判と違って文系大学院生って普通に手が足りないので……院進を考えている後輩たちへ、一応相談にはのります。


柚子の花から生まれてさ

絵の人のつむじがきれい水の秋
かわいさと秋雨でよく見えなくなる
手にピザの匂い残っていて秋めく
星合走りだして眼がわるいから好きだったよ
一反木綿びゃっと飛ぶ秋祭
不知火と一緒に岸につく流木
全身ですすきがもたれかかってくる
うりぼうがもっこりと寝ている野原
秋服かくれやすい しなやかな手で見つけてよ
ペガスス座 幸せにたり得る頬に
紅葉の道を素直にふざけあう
カピバラ鳴くのかなぁとか雪国の長い夜
厚着して袖あざやかにさせていく
どれも派手ホットワインに浮かべれば
花枇杷の蜂に似ているかたまりかた
湯ざめして踊っても孔雀になれないよ
手をつなぐ。聖夜がすっと終わるから。
寝息だらしないね 今度むささび見に行こう?
頷いている ぼうと枯野を来た風に
冬の詩の初稿が刺していく余白
しましまのいるかがぴゅいと顔をだす
雪折れがもうすぐ海に届きそう
気がつくまでは会いやすい寒さかも
つららに映して大きくなる眸
煤を払う 擬音で風になる君と
初富士浴びてどの棚もあかるい木
永い日の祈りに首の重そうな
うにゃあと恋猫きこえれば街じゅう恋の季節だった
単純でごめんね挿木切りだすね
君は鈍感 うららかに袖余したよ
はじらい、みえない。わだかまるごんずいたち。
ふるつるにおなじかおいろ(おびえていて)
ぎしぎしがとやかく揺れる 曇りだす
流氷にじゅうぶん閉ざされる湊
イースターエッグ イニシャルなるべく小さく書く
はらはらと心 花冷えに肌撫でつつ
朝いつも唇しおらせてヒヤシンス
春の雪ことばがつぼみらしく口ごもる
わたし、さ、柚子の花から生まれてさ。
話せばがんがぜおろおろと動く凪
それは川のように鳴る夏の星になる
化粧水置いて百合ごと窓かくす
夏ぐれの街が深海に似て睡りやすい
白夜/消散 夢が手に蝕まれる
打ち揃う指であとはかみなり待つだけで
ばしっと滝 目覚めれば雲もうないから
水売が空ごと持ってくる坂だ
なだらかなたこのあくびに透けてくる
執筆のように脚うごかして泳ぎだす
もうすぐ消える虹を計算して逢うよ

『柚子の花から生まれてさ』©︎Kaname Tamura 2023


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