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遊び読書記録ー『僕は君たちに武器を配りたい エッセンシャル版』

bBearさんによる写真ACからの写真

読んだ本をアウトプットする+専門と絡めて「遊び」の視点からの読書記録。

今回読んだ本は『僕は君たちに武器を配りたい エッセンシャル版』。

前置き

 著者は瀧本哲史さん。東大法学部卒業後に同大で助手を経たのちに、マッキンゼー&カンパニーでコンサルタントに。独立後は経営コンサルタントとして企業再生などに携わる傍らで、エンジェル投資家として活躍。京都大学産官学連携本部 イノベーション・マネジメント・サイエンス研究部門 客員准教授として、起業論についての教鞭もとられていました。
2019年8月に47歳の若さで亡くなられています。

 大元の『僕は君たちに武器を配りたい』は2011年9月に発刊されており、当時ベストセラーとなったようです。確かに本屋やweb記事で目にしたような記憶がなんとなく残っています。
 今回読んだエッセンシャル版は、「原本の趣旨をなるべく損なわないような形で、エッセンスを抽出した」もので2013年に初版が発行されています。2011年から数えると9年が過ぎており、当時と状況が変わっていて、一部現状ではズレていると感じる箇所もありますが、それもいい意味で本書のメッセージのエッセンスになっているように感じます。

「はじめに」の書き出しに

本書は、これから社会に旅立つ、あるいは旅立ったばかりの若者が、非常で残酷な日本社会を生き抜くための、「ゲリラ戦」のすすめである

とあります。また、裏表紙には

非情で残酷な日本社会で、20代が生き残るための思考法とは何か?

ともあり、20代向けに書かれた本ですが、『僕は君たちに武器を配りたい』がベストセラーになった際には、「むしろ30代の中堅ビジネスマンから圧倒的な支持を取り付けることができた」ようです。
 その当時に読んでいたら…、という思いもありますが、書籍との出会いは何事も必要な(受け取れる準備ができている)タイミングですので、今でも参考になる点は多かったです。

本書は、大きく4つの話題で構成されていると読みました。
①「コモディティ」⇔「スペシャリティ」
②「本物の資本主義」
③資本主義の世界で生き残れる人材
④若者へのメッセージ

①「コモディティ」⇔「スペシャリティ」

 「コモディティ」とは、端的には個性がなく代替がきくもので、現代社会では個人のコモディティ化が進んでおり、(誰もが)勉強で身につけられる能力では、努力量と収入は比例しないと説いています。ではどうすればいいのか?「スペシャリティ」つまり、代替がきかない者になれと。
 
 ジェネラリスト(仮)を標榜している私としては「スペシャリティになれ」というのは一見向かい風のような話です。
 ちなみに、プレイリーダーという仕事は、領域が異なるだけで、教師(教育)や保育士(保育)と近い仕事でもあります(プレイリーダーは遊び)。そもそもこれらの仕事は公益的なもので、市場経済の観点で考えすぎると本来的な存在意義とずれていくのですが、敢えていうと教師も保育士も「コモディティ化」しやすい仕事だと言えます。プレイリーダーも同様です。その中にあって私はジェネラリストという「スペシャリティ」を目指しているのだなと、ここで整理ができました

②「本物の資本主義」

 日本は明治維新以降、資本主義国家として歩みだしたと言われますが、実際は規制で産業が守られていて、グローバル化が本格化した2010年代になって、やっと世界中の人々と競争する「本物の資本主義」の社会になったと瀧本さんは言います。
 その中にあって、日本国内に目も向けたときに、本書のメインターゲットである20代に合わせて、具体的な事例を挙げてどういう視点で会社や起業の道を考えればいいのかレクチャーされているのがこの部分です。

③資本主義の世界で生き残れる人材

 ここでは、海で魚をとる漁師を題材に、単なる労働力として使われるコモディティ化した人材ではない、儲かる人材として、6つのパターンを紹介しています。これ、著作権法的にどこまで書いていいのか、わからん^^;。ということで、NEWSPICKSで瀧本さんのインタビューでまとめられている記事を見つけたので、そちらをご参照ください。
 個人的には「マーケター」の部分が一番参考になりました。

④若者へのメッセージ

 最後はこれから「本物の資本主義」を生きていく若者に対してのメッセージ。要は、自らの頭で考え、自らが動いて手に入れたものが自分の武器になる。自分の人生を生きるのは、自分自身、周囲に何を言われようと、自分で信じたリスクをとるべきだ、プラス投資家的思考を大事にという内容です。

「遊び」の視点から

本書では以下の部分をピックアップ。

 (前略)成功した起業家に実際に聞いてみると、学生のときから起業のためにすごく努力をしていた、という人はほとんどいない。
 そうではなくて、自分が長年興味と関心を抱いた何かに、心から打ち込んでいるうちに、たまたま現在の状況につながっていった、というケースが多いのだ。
 (中略)社会に出てから本当に意味を持つのは(中略)、自らが動いて夢中になりながら手に入れた知識だけだ。
 (前略)時には周囲から「ばがじゃないのか」と思われたとしても、自分が信じるリスクをとりにいくべきだ(中略)。たとえ自分でリスクをとって失敗したとしても、他人のいいなりになって知らぬ間にリスクを背負わされて生きるよりは、100倍マシな人生だと私は考える。

 いつの時代も、子どもの頃に「心から打ち込んでいる」ものは、歳を追うごとに周りからの無自覚な「いつまでそんなことやっているの?」というプレッシャー?同調圧力?に削られていってしまう。
 「心から打ち込んでいる」時というのは、本当に遊び込んでいる時でもあります。元陸上選手の為末大さんは、幼少期に遊びながら自らの身体感覚を探っていたと言います。「自らが動いて夢中になりながら手に入れた知識」がその後の競技人生につながっていると。
 翻って今の時代子どもたちは、どれだけ時間を忘れて遊び込むことができるでしょうか。この本は20代の若者たちへ「武器を配る」ものですが、彼らがその武器を使いこなすための土台は幼少期に培われるのだと思います。

総評

☆☆☆★★(星3つ)
前置きにも書きましたが、発売当時に読んでいたら、もう一つは星がついたと思います。今の私の状況を整理することができたので星3つ。
同業の後輩たちにオススメしたいです。

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