【一首一句 その三十一】我が身惜しみて春立てる

【本日の一首】
またも来む時ぞと思へど頼まれぬ我が身にしあれば惜しくもあるかな(和漢朗詠集、巻上、春58、紀貫之)

(鑑賞)
また春がやってくるとは思われる、わかっている。
それでも当てにできない、来年まで生きているかもわからない命だ。
だからこそこの春のひとときが惜しく感じるのだ、という一首。
季節の中に置き去りにされ、四季はただ回り続ける。
その時の中に物思いに耽りながら生きていくのが日本人の感覚。
四季が回り続けるのに対して、人間はいつ果てるとも知らない。
そんな悲哀が感じられます。

【本日の一句】
頼まれぬ吾が身惜しみて春立てる

兼題の一首をもとにして、だいぶコンパクトに一句に詠み込みました。
でも元の歌のような深い味わいがないなあ。おそまつ。

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