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古代エジプトの技術が輝く!ツタンカーメン黄金のマスクの秘密〜 「河江肖剰の古代エジプト」より


はじめに

古代エジプトにおいて最も有名なファラオ、ツタンカーメン。彼が眠っていたお墓の中からは、およそ5000点以上の財宝が発見されたと言われています。今回はそのツタンカーメン王墓で発見されたいくつかの財宝と有名な黄金のマスクについて解説したいと思います。

今回の記事の内容はこちらの動画でも詳しく解説されていますので、興味を持たれた方はぜひご視聴ください。

ツタンカーメン王墓の発見:輝かしい数々の財宝

1922年、エジプトの砂漠の中で考古学者ハワード・カーターは、すべての考古学者が夢見る発見をしました。それはエジプトのファラオ、ツタンカーメン王墓の発見です。発見当初の王墓の中は、かなり雑多な様子でモノが置かれている状態でした。実はツタンカーメン王墓は古代において2回盗掘にあっていたと言われています。つまり、盗掘家たちが盗みに入り王墓を荒らしたため、このような状態になっていたのです。

かなり荒れた様子だったツタンカーメン王墓の内部

具体的にどんなものがあったのでしょうか。そこにあったものとして、例えば神々しい動物の顔を持つベッド、穀物や他の食物を収納する容器、戦車などが解体されて置かれていました。また2体の壮大な番人の像が、そこで何かを守るように立っていました。こちらの像に関しては、今現在カイロ・エジプト博物館に展示されています。

2体の番人の像が何かを守るかのように配置されていた

ツタンカーメンの遺物:パピルス文書の存在

カーターと彼のチームは、ツタンカーメン王墓から5000点以上の遺物を発見しました。しかしその中には、ツタンカーメンがどのようなファラオで何を行ったのかを記したパピルス文書はありませんでした。そのためイギリスの研究者であるNicholas Reevesは、その文書がどこかに隠されているのではないかと推測し、番人の像のスカート部分にパピルス文書が隠されているのだと考えました。

不自然に膨れているようにも見える?「番人の像」のスカート部分

そのため彼はそのスカート部分をエックス線で調査することにしたのですが、結果的にはそこからパピルス文書は見つかりませんでした。しかし、最終的にこの調査では見つからなかったのですが、今後どこからか見つかる可能性は0ではないと言われています。

九重の保護:ツタンカーメンのミイラ

ツタンカーメンのミイラは部屋全体を覆うような巨大な厨子に守られていました。この厨子にはオシリス神とその妻イシスの象徴が施されており、その壮大な姿にカーター自身も驚いたとされています。

古代エジプトの神の象徴が全体に施された巨大な厨子

ツタンカーメンのミイラは四つの厨子に守られており、その厨子の中には珪岩の石棺が置かれていました。人形の中に人形があり、また人形の中に人形があるロシアのマトリョーシカのように、棺もまた、人型棺の中に人型棺、そしてさらに人型棺がありました。最終的にミイラを守っていたのは計九重の守りでした。9層の守りによってツタンカーメンのミイラは守られていたということになっています。

上4つの厨子に加え、一番下の棺の中にはまたさらに人型棺がいくつも重なっている

黄金のマスク:技術と想いの結晶

ツタンカーメン王墓から発見された最も象徴的な遺物は、疑いようのない黄金のマスクでしょう。その重さは驚くべきことに10キログラムで、23金製と判明しています。

10kgもの重さがあるツタンカーメンのマスク

近年早稲田大学がエックス線を使って分析したところ、この23金の上に、 18金と22金の金の合成粉末を塗布されていることも判明しました。それによって、太陽の光線のように白っぽく輝くようになったと言われています。他にもこのマスクにはファイアンスや、色ガラス、カーネリアン、石英や黒曜石など様々な素材が工夫を凝らして使われています。この黄金のマスクには、当時のファラオの死に対する人々の想いというのが凝縮されており、 それがこのマスクへの芸術として表れているのです。

さいごに

エジプトのファラオ、ツタンカーメンの秘密はまだすべてが明らかになっていません。ただその墓の中に隠された数々の遺物から、当時の人々の生活や信仰、そして彼らの王への敬意が見えてきます。それらは時間を超えて私たちに語りかけ、古代エジプトの人々の精神性を感じさせてくれます。

今回の内容についてさらに詳しく知りたい方は、こちらの河江肖剰先生の動画「【ツタンカーメン】黄金のマスクは〇〇?衝撃の技術力」をご覧ください。今回学んだ内容を、より深く理解することができるでしょう。

河江 肖剰(かわえ ゆきのり)
エジプト考古学者/名古屋大学高等研究院准教授/米ナショナルジオグラフィック協会のエクスプローラー。19歳でエジプトに渡り、1992年から2008年までカイロ在住。カイロ・アメリカン大学エジプト学科を卒業後、名古屋大学で歴史学の博士号を取得。ピラミッド研究の第一人者であるアメリカ人考古学者マーク・レーナー博士のチームに参画し、ギザの発掘調査に10年以上従事。2016年ナショナルジオグラフィック協会のエマージング・エクスプローラーに選出。ピラミッドの3D計測など、最新技術を用いた斬新なアプローチでエジプト文明の研究調査に取り組んでいる。


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