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クフ王の家族と王位継承の謎〜 「河江肖剰の古代エジプト」より


はじめに

みなさんはエジプト第4王朝のファラオであるクフ王を知っていますか?
ギザの大ピラミッドを建設したことでも知られるとても有名な王ですよね。では、そんな彼の息子であり長男であったカワブという存在をみなさんは知っていますか?この動画では、そのカワブという男について詳しく紹介されています。

クフ王の家族: カワブとその墓

カワブは、ギザのピラミッド群にある王妃のピラミッドの東側に建てられたマスタバ墳墓に埋葬されていました。彼の墓はアメリカの考古学者George Andrew Reisner氏によって発掘され、その墓にはG 7110とG 7120という番号が付けられています。

発見されたカワブの墓

そこで彼の名前が書かれてあるものが見つかったのですが、そこには彼の遺物というものがほとんどなく、当然ミイラや財宝といったものも見つかりませんでした。残念ながら、盗掘の被害にあったものと考えられています。

“The Giza Project”: ギザの歴史を解明

もしそんな彼の墓に関して詳しく知りたいと思った方は、"Digital Giza"というウェブサイトを訪れてみてはいかがでしょうか?
そこでは“The Giza Project”というプロジェクトの成果により、誰でもギザとその考古学の歴史についてのデジタルアーカイブに触れることができるようになっています。

“The Giza Project”とはハーバード大学のPeter Der Manuelian氏が中心となって進めている、ギザに関連する論文、写真、古い実測図などを一元化し、詳細な情報を提供するプロジェクトです。

Peter Der Manuelian氏は過去の発掘調査で、当時まだ一般的ではなかった360度カメラで遺跡の写真を撮るなど、早くからデジタル技術を取り入れており、様々なエジプトの記録をデジタル化することに今も尽力しています。

特にギザに関するデータは膨大であり、その中にはカワブに関するデータも公開されていますので、興味がある方はぜひ訪れてみてください!

カワブの王位継承の謎: クフ王の後を継ぐ者

では、改めてカワブの話に戻りましょう。そんなカワブという男でしたが、彼はクフ王家の長男でありながら王位に就いていませんでした。クフ王の後を継いだのは、ジェドエフラーという人物であり、その後はギザの三大ピラミッドの一つを建設したことでも有名なカフラーが王位に就いているのです。彼らはいずれもカワブと同じクフ王の息子でした。

クフ王の子どもたち(一部)

いったいなぜカワブは王位に就けなかったのでしょうか?
これについてアメリカの考古学者であるGeorge Andrew Reisner氏は、そこには王位継承を巡る争いがあったのではないかという説を提唱しました。しかし実際のところ、この説が正しいかどうかは未だ確定的な証拠が見つかっていないため、現在のところ正確な答えは分かっていません。

George Andrew Reisner氏自身はこの説の根拠として、クフ王の後を継いだジェドエフラーがギザではなく、北のアブ・ロアシュという場所にピラミッドを建設したからだという点を挙げました。

彼はジェドエフラーがギザでの王位継承権を巡る争いに破れ、その結果北へ追いやられた為、そこにピラミッドを造ったのだと考えたのです。
興味深い説だとは思いますが、どうやら最近の研究ではこの説はあまり受け入れられていない説となっているようです。

クフ王の家族: カフラーの名前の由来

ちなみにジェドエフラーの次に王位に就いたカフラーですが、彼は王に即位する前はクフカフという名前で呼ばれていました。なぜ彼はそこからカフラーという名前になったのでしょうか?

このことについてドイツの考古学者Rainer Stadelmann氏は、彼が王位に就く際、クフカフという名前の一部と太陽神であるラーを組み合わせた結果、カフラーという名前の王になったのではないかという説を提唱しました。

自身の名前と太陽神ラーの名前を合一させたという説

あくまでも仮説の一つですが、カフラーという名前にはそのような由来があったようですね。

おわりに

クフ王家の家族構成は非常に興味深い事柄ですが、古王国時代は新王国時代に比べると情報が少ないため、まだまだ分からないことが多いというのが現状です。それらは今後の調査と研究によって明らかになることが期待されています。

この動画では、クフ王の家族について、特に長男のカワブについて詳しく説明されています。
興味を持った方は、ぜひYouTube動画「【クフ王の長男】悲運の男?お墓は?王になれなかったカワブの謎」をご覧ください。

河江 肖剰(かわえ ゆきのり)
エジプト考古学者/名古屋大学高等研究院准教授/米ナショナルジオグラフィック協会のエクスプローラー。19歳でエジプトに渡り、1992年から2008年までカイロ在住。カイロ・アメリカン大学エジプト学科を卒業後、名古屋大学で歴史学の博士号を取得。ピラミッド研究の第一人者であるアメリカ人考古学者マーク・レーナー博士のチームに参画し、ギザの発掘調査に10年以上従事。2016年ナショナルジオグラフィック協会のエマージング・エクスプローラーに選出。ピラミッドの3D計測など、最新技術を用いた斬新なアプローチでエジプト文明の研究調査に取り組んでいる。



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