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現代の技術でピラミッドを再建するとどうなる? 〜 「河江肖剰の古代エジプト」より

古代エジプトのピラミッドは、その規模と精巧な構造で人々の興味を引き続けています。では、現代の建築技術を用いて、クフ王のピラミッドを再建することが可能なのでしょうか? 

実は日本の大手ゼネコン大林組がその可能性を試算しており、この動画で解説されています。

大林組が1978年に計算したところ、当時の技術を用いてクフ王のピラミッドを建造すると、おおよそ1250億円の費用がかかることが分かりました。さらに、建設には3500人の労働者が必要で、期間は約5年間とされています。

興味深いことに、古代と現代の技術で共通するポイントがいくつか存在します。ピラミッドは国家プロジェクトであり、考古学者のマーク・レーナー先生は労働者の居住地の重要性を強調されていますが、これに対し、大林組も同様に居住地のコストを最初に考慮していました。現代の建築技術でクフ王のピラミッドを建造する場合、最初に労働者の居住地を確保し、石切りを始めることが重要です。この点では、古代と現代の考え方に違いはありません。

大林組の見積もりによると、まず傾斜路を利用して石を運び、一定の高さまで積み上げた後、リフトを使って石を持ち上げていくという形をとることが可能です。

しかし、現代の技術を用いてピラミッドを建設する際、頂上部が最も問題となります。傾斜路やダンプ、クレーンが使えないため、大林組の見積もりではヘリコプターを使用して石を運ぶ方法が提案されています。古代でも頂上部の建設は難題であり、いくつかの仮説が存在するものの、はっきりとした答えは未だ見つかっていません。

研究者たちが提唱する建築方法には、直線的な傾斜路、ぐるぐる巻きのソフトクリーム状の回っていく傾斜路、あるいはピラミッドの側面に沿うような形でジグザグの傾斜路など、いくつかの仮説が存在します。しかし、いずれの仮説でも頂上部の建設は難しく、労働者が働くための土台が必要になります。その土台をどのようにして確保するのか、テラスのようなものを造り上げるのか、さまざまな説がありますが、この頂上部については未だ確定的な答えが見つかっていません。

1978年の技術を用いても、ピラミッドの建設は大変な作業であることが分かります。クフ王のピラミッドを現代の建築技術で再建する試みは、古代エジプトの技術の偉大さを再認識させるだけでなく、現代の技術と古代の技術がどのように違うのか、そして共通点が何であるのかを理解する手がかりとなります。そして、現代の技術でもピラミッド建設の難しさを克服するためには、さらなる研究や工夫が必要であることを示しています。

興味を持たれた方は、こちらのYouTube動画でより詳しい解説をお楽しみいただけます。ピラミッドの謎に迫る現代の技術をぜひご覧ください。

河江 肖剰(かわえ ゆきのり)
エジプト考古学者/名古屋大学高等研究院准教授/米ナショナルジオグラフィック協会のエクスプローラー。19歳でエジプトに渡り、1992年から2008年までカイロ在住。カイロ・アメリカン大学エジプト学科を卒業後、名古屋大学で歴史学の博士号を取得。ピラミッド研究の第一人者であるアメリカ人考古学者マーク・レーナー博士のチームに参画し、ギザの発掘調査に10年以上従事。2016年ナショナルジオグラフィック協会のエマージング・エクスプローラーに選出。ピラミッドの3D計測など、最新技術を用いた斬新なアプローチでエジプト文明の研究調査に取り組んでいる。




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