見出し画像

morning

頭の中で洋楽がかかってる

あぁ… なんて言う曲だっけ…

Suddenly I see ー

サビの言葉がはっきりと聞こえた

あ。KTタンストールだ。

『サドゥンリー・アイ・シー』と頭の中で呟く。

お気に入りの映画…のオープニング曲。

もう何度見たか分からない。

仕事で落ち込むたびに励ましてくれる映画。

(タンストールがスコットランド出身ということは最近知った。)

お休みの日も、この曲を聴いて気分を上げてスタートしたくて。

そういえば、この間セットしたっけ。


「彼女は美しい女なの

モノクロ映画の主人公みたいに、何から何まで充実していて

思い出せば、あなたはもっと暖かな気持ちになるわ

彼女は自分のなりたいものになる力を得たのね」


ーわたしもそうなりたい

ぬくぬくとした布団の中で、ぼんやりそんなことを考えてると


「うーん、いま何時?」

寝ぼけた声が隣からきこえる。


いつもかけてる眼鏡がないせいか、ずっと若くみえる。

「まだ6時だよ」

「…ずいぶん早い時間にアラームセットしてるね」

ほんとだ。笑

外はまだ薄暗い。

「何時に出たら間に合う?」

「…7時かな」

「シャワー使っていいよ」

それだけ言うと、ベッドから降りる。

3月半ばとはいえ、部屋の空気はひんやり冷たい。

朝ごはん2人分できるかな…と考えながらキッチンに向かう。


なんとなく、彼とこのまま一緒に朝ごはんを食べたい気分だった。

彼がお風呂場から現れた時には

トースト、サラダ、ヨーグルト、目玉焼きがなんとかできていた。

「時間あったら食べられるだけ食べて」

残ってもいいよ、と言っておく。

「全部食べる」

そしてほんとにぺろりと食べてしまった。

「いつもこんなにちゃんと食べてるの?」

「まさか。今日はそんな気分だっただけ」

「ありがとう。ごちそうさま」

それだけ言うと、彼はてきぱきと帰り支度を始めて、きっかり7時には出て行ってしまった。


彼が居なくなった部屋で、

(それが普段通りなのに部屋の温度が一気に冷たい)

2杯目のコーヒーを飲む。


これは始まりなのか、ただの気まぐれか。

昨日からずっと考えていることをまた繰り返す。

「自分になりたいものになる力を得たー」

彼がそうなのか…

まさか。

そんなわけない、と笑う。

だって、私は私自身の力でなりたいものになれてきた。

きっとこれからもそう。

だからこれは、たぶん…

真新しい…春の夜の夢。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?