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誰かを呼ぶ声

その日は、先週末に起こった問題のために朝っぱらから施設に行かなければならない日だった。休みだったのに・・・。

色々と片付けているうちに昼になった。そして丁度その朝、夜勤明けだったKちゃんも仕事が終えるのが昼になり、二人で我が家へ帰る予定だった。

それなのに、どうしたことか、既に24時間以上寝ていないこの人が『このままどっか行かない?デートしよう、デート!』と言う。
やめときなよ、死ぬぞ!と言ったのだけど、その気持ちがちょっと分かる。仕事ばかりしていて最近遊んでないもんね。

とは言うものの、遠出するとどこで力尽きるか分からない。映画館に座れば二人とも瞬速で深い眠りに落ちるだろう。

なので、違う沿線にある街までバスで行き、単なるショッピングと食事をしようと言うことになった。それだけでもずいぶんと気晴らしになると。

そして、その街を歩いている際に、二人とも出会ってしまった。

物凄く小さいのにバタバタ動いている単なる子猫に釘付け。ペットショップだった。

時折、我が家のブランカが悲しそうな声を出すことがあった。二人とも家に居るのに、まるで誰かを呼ぶように。

人間と猫ではダメなのか?仲間が欲しいのか?でも、多頭飼いは相性が悪かったら最悪。可哀そうなことはしたくないね・・・と言い合っていた。あとね、ほんとに責任を持って家族として迎えるのだとしたら一匹につき年収がプラス150万必要とまで言われている。えー?そう?と思って、マジに考えてみたら『ほんとだ。。。』と納得のな。

色んなことを納得しているのに、二人とも、その月齢2ヵ月の子の前で立ち止まり無言で固まってしまった。
男の子だ。最悪だ。滅茶苦茶やんちゃだ。ブランカには無理だ。

そうそう、話は戻るけど、経済、経済。シェルターで出会ったブランカさんだって中々万円払って引き取って来たが、出会ってからのこの4ヶ月を思うと、先述した額は余裕で超えてしまうだろう。

その場を離れるのに時間がかかったが、互いに『行くよ。帰るよ。』と声を掛け合い、当初の目的通り、買い物をして食事をしてバスで帰って来た。

夕方頃に帰宅して、当然限界に達しているのでソファーで眠りに落ちる。
それなのに、2時間後にふと目を覚まし、二人とも同じことを言った。『夢を見た。夢に出て来た。』と。そう、さっき出会ったばかりのラガマフィンの子猫の夢だ。

馬鹿だな~・・・、ほんとに馬鹿だな、私たち!と言いつつ、笑いながら、今度は自転車を走らせ夜の街に戻ったのだ。あの子が居る店へ。

あれから約一週間。

今、この家では、月齢9ヶ月だがすっかり成長したブランカと、月齢約2ヶ月の子猫が、連日じゃれ合い、追いかけ合い、大運動会を繰り広げている。

おかげさまで毎日寝不足だが、もう、あの悲しい声を聴くことは無くなった。

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