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夜行行列その3

それから1年くらい経った頃、こんなことを書いている。

”今のところへ越して来てからいつの季節だったろうか。

相方が夜勤で居ない夜に、マンションが面している通りが徐々に騒がしくなったことがあった。

遠くの方から笛や太鼓の音が聞こえて来て大層な行列が前を通って行く。

行列の最初の方は厳かな音楽で足取りもゆっくりとしていたが次第に騒がしくなりお祭り騒ぎのよう。

寝ているのか金縛りなんだか分からなくて、やっと目を覚ましたのだけど、その長い行列は確かにベランダの前の道を真っすぐ左から右へと移動していた。

思わず息をひそめてしまう。

それを翌日相方に話した際に「狐の嫁入りだ」と彼女は言った。

そう言われて見ると騒ぎ方が少し人間離れしていたような・・とその時は思った。

怖くて、本能的に見つからないように息をひそめていた気がする。

その時は夜中の2時くらいから始まって、やっと終わった、通り過ぎたかと思ったら、後から2~3人が駆けて行きながら「しまった、遅れた、遅れた!」と。(いや、もっと変な喋り方だったけれど忘れてしまった。だいたいこんな内容のことを言っていたと思う。)あたかも裸足で駆けているような音を立てて通り過ぎたり。もうそれは明け方だった。

ずいぶん前のことで忘れていたのだけど、それが先日また来た。

この時はまだ23時くらいで、こちとらバリバリに起きていて映画なんぞを観ているときだったので非常に困った。あれはやっぱり寝ぼけていたからじゃなかったんだということで。

以前よりも短い行列で終わった。

短くても怖さはマックスだった。サッシとベランダが隔ててなかったら、つい2メートル先を得たいの知れない行列が往来しているのだから。

この時もやはり相方は夜勤だったので数日後に話した。前と違うけど、時間もまちまちなのかな?と。

そうすると相方は「位によって時間帯も行列の長さも違うんじゃないかな。」という。位なのか値段なのか。良い時間帯が真夜中の2時頃で、予約がいっぱいなのか?とか。

そして、その時相方が「去年の話聞いた後、ずいぶん経ってから一人でいるときに思い出したんだよね。」と言う。「自分も祭囃子を耳にして、お祭りの練習をどこかでしているのかな?でも、物凄ーーく音が近い割に見えないんけど。」と思っていたらしい。

へー、互いに同じものとは思わず、多分同じものに遭遇していたんだ。

再びその話題になったので調べたところ、例の〇〇稲荷についての記述がネットに載っていた。昔からそこは○○財閥の人々が祭りを取り仕切っていたのだとか。しかし、今はもうそのお稲荷さんでのお祭りは行われていないらしい。

で、実は勤め先に〇〇財閥、○○一族のお婆ちゃんが居る。かなり認知症が進んでいるけれど昔のことはよく覚えているようだし、今度訊いてみたいような、訊くのが怖いような。

その目を瞑っていても開けていても、寝ていても起きていても見える行列のことを。”

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