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運休 / マリアちゃん

所用で原宿へ行こうとしたところ、馬場の手前あたりで山の手線が運転見合わせとアナウンスが流れた。

なぬ?

私、1時間以内に職場に戻る予定だったんだけど?

しかも、そのアナウンスやネットのニュースを観たところ、相当長い時間運休しそうな気配。

ど、どうしようかな?

馬場から渋谷方面のバスってあるのかな?と考えたけれど、新宿まで出た方が分かりやすそうだと思った。
しかし、新宿の”バス乗り場はこっちです”的な案内を見上げながら歩いていたところ、つくづく思った。
30年以上経ってもやっぱり私はおのぼりさんだっ!さっぱり分からないっ!

こりゃダメだわ。タクシーで・・・と思って見てみると・・・凄い行列。で、行列に並ぶのも嫌いなんかい、今でも!

それじゃあ・・・、あ、あそこに喫煙所があった。とりあえず落ち着こう・・・と、その階段を上ってみると、あった!見えた!あそこの一番前のバスに渋谷行と書いてある!

一服しては駆け寄って乗り込む。

どこら辺まで徹底したおのぼりさんなのか?というと、ここからである。渋谷行とハッキリ書いてあるバスに乗っているというのに、いちいちスマホのナビと景色を見比べてしまうのである。←誰も信用していない人。

かくして、私の所用は達成された。

***

最近、コンビニのチキンをよく食べる。ナナチキというやつである。

しかし、早朝に施設の近くのセブンに行くと、当初は品出しがさっぱり出来ておらず、ナナチキなどのホットスナックも空っぽ。

私がその施設に通い始めた2月あたりからレジに居るおそらくはフィリピンか?それともインドネシアか?ちょっと国籍は分からないけれど、体格の良い女性。非常に不愛想で無表情。笑顔を一度も観たことがない。おそらく日本で苦労をされているのだろう。
名札に「マリア(仮名)」とある。

マリアの時は品出しが全然出来ていないので、ナナチキをあきらめる。
しかし、時折日本人女性の店員さんがマリアちゃんに教育していて、その時は当然品出しがばっちりなのでナナチキを買う。

しかし、日本人の先輩が居て、ナナチキが陳列されているときも、レジの段階でマリアちゃんはナナチキをしょっちゅう入れ忘れて「ありやとおーごじゃいました!」と私を追っ払おうとするので「ナナチキ。ナナチキ。」と小声で指をさす私。
何故小声なのか?というと、おそらくその日本人の社員さんに怒られるのではないか?と思うからだ。

が、そのうち、マリアちゃん一人の時も、おにぎりやお弁当などは積みあげられたままでも、ナナチキだけは温めておいてくれるようになった。

そして、今日は、私が初めて昼にコンビニを訪れた日だった。ほれ、渋谷・原宿に用事があったから。

すると、マリアちゃんは、沢山お客さんが居ると言うのに、私の顔を見るや否や、あきらかにギョッ!としたように時計を観た。
「なんで、こんな時間に来た?」と言わんばかりに。

そして、カップスープと菓子パンをレジに持って来た私がお会計しようとしていると、大きな目を見開いて「ナナチキ食べないの?どうした?」と言った。
爆笑した。

マリアちゃんは敬語は覚えられないみたいだが、お客さんは覚えるようだ。しかも、心底心配している様子で「食べないの?」と言っているのだ。

私は後ろに並んでいる人が居るというのに、爆笑しながら「じゃ、ナナチキ貰おうか。」と答えた。

施設に着いてこのことを話すと皆さんも「わあ、かわいい!」と笑ってくれた。
いつもせかせかと訪れては去って行くであろう日本人たち。私もその一人。

一度もあなたの笑顔を観たことがない。マリアちゃん、あなたに言えば良かった。メリークリスマスと。

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