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冷たい風が吹いていても

厳しい冬が終わろうとしている。
今日もそこそこ風が冷たいが、もうしばらくこれくらいの寒さが続いて、やがては冬を忘れ去り当たり前のような春がやって来るのだろう。
寒いのは嫌いなはずだった。
しかし、自分が苦手なものを自覚して挑むと季節ですら「何だ、終わりか。こんなものか。」と思ってしまう。
でも、ヘタレ加減すら自覚しているので「当たり前じゃないぞ。よく頑張った。よく1年間もこんなところに通って仕事をした」と褒めてやりたい。もちろん1人ではやって来れなかったのだけど。

***

ショートステイのご利用者であるお婆ちゃん。働き者だったから、ひと時もじっとしていられない。そして短期記憶が抜け落ちるので、数時間、いや、数十分すると「あたしゃ、なんでこんなところにいるんだっけ?」と不穏になる。よく喋る人なので不穏になった時の破壊力も凄い。
何が良くないのか?というと、この方は微塵も悪くない。その様子を見てテンパってしまう周囲の職員が悪いのだ。何故にテンパるのか?というと、すぐに収めようとするから。自然と声も大きくなる。多分この方の早口がそうさせるのだろう。
なので、あえてゆっくり喋る。「息子さんが入院してるから、一週間だけお泊まりって言ったでしょ?」と、ポンポンと肩を叩くと瞬時に「あ。そっか。」と。

「やだねー、あたし、うるさいでしょ?だから若い人に嫌われるんだよね?!」

大丈夫、大丈夫。私もお婆ちゃん予備軍で、動けないモンだから口を出してばかりです!口出してりゃ良いんですよ!
「あーーはっはっはっ!そっか!あーはっはっはっ!」と盛り上がる。

しかし、しばらくすると「ここはどこ?あたしゃ。。。。」と始まる。

毎回毎回上記の会話を繰り返すのか?というと、そうではない。

「若い時ほど動けない時は?」と声をかけると
「口を出す!」と応えてくれる。

そう!婆ちゃんになってからの仕事は?

「口を出す!」

黙れ!と言われたら?

「喋り倒す!」

そうっ!
で、息子は?

「入院してる。」

その通り!

風呂沸かしたんで入ってください。

「あいよ。」

歳を取ると短期記憶が無くなるというのは嘘である。少なくとも正確ではない。繰り返し伝えることは必ず入って行く。

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