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幽霊坂

ラインではなくて直電だった。でも、着歴が出るので一目で誰か分かった。昔のクライアントさんだ。

大きなセッションは大昔に終わったものの、人間というのは常に悩んだり考えたりするものだから、また何か辛いことでもあったのか?と思った。フルでセッションしている頃も予約なしは無理!と言っていたのだけど、ついつい出てしまった。長電話だったらどうしよう。

ところが、いきなり本題だった。

「夢にOhzaさんが出て来たの!」と。

何故だかこれ、昔からよく言われるセリフ。皆さんもこんなことってあるのだろうか。

下手するとネットで知り合ったお会いしたこともない方からも言われることがある。

それはさておき、彼女が見た夢と言うのは、急な上り坂を一生懸命登っている時に喘息の発作が起きたという夢だったと言う。

へえ~、喘息って、夢の中でも起きるんだ。

「起きたんですよ。凄く苦しかったんです。でも、ふと気づいたらOhzaさんが隣で一緒に登っていて、息一つ切らしてないから不思議に思って見つめていたら、『ふうん。これは、幽霊坂だね。』と言ったんです。」

幽霊坂?私は彼女の怖い夢に現れたのだろうか?

と思ったのだけど、どうやら違うらしい。

「そしたら、途端に呼吸が楽になって、すいすい登って行けて、最後は、滑り台を逆走するかのように楽しく登って行ったの。そこから先は登ったり下ったり。猛スピードが出て、二人で『ひゃっほーい!』って。ウォータースライダーみたいでした!笑いながら目が覚めました。」

全然意味が分からない。何がそんなに楽しいのか?分からないのに『良い夢を見ました!』と言われても。

ところが、この話には続きがあって。

「幽霊坂」という言葉が印象的だったので彼女がネットで調べてみたところ、全国各地にある勾配が逆転して見える坂道のことを指すということが分かったそうだ。

つまりは大きな下り坂なのに、表面的には登り坂に見えたりするわけで。

ネガティブな私は、それを聴いて『でも、そのせいで事故が起こるから、ほんまもんの幽霊が出たりするんでしょ?』などと水をさしてみたが、彼女はフルしかと。

「考えてみれば、これまで乗り越えて来てことを思えば、今辛いことなんて何でもなかった!と目が覚めてから気が付きました。ありがとうございます!」

そんなことでお礼を言われても。

でも、どんなことにも意味を見出そうとする癖がある私は、電話を切ったあとで考えた。

きっと、このエピソードが舞い込んで来た私にも同じことが起こっているんじゃないかな?と。

幸せなことばかりに慣れ過ぎて、小さな不便や不理解を大きな苦労と捉えすぎている私に、神様は、彼女を使わしてメッセージをくれたのかも知れない。本当は、そんなに苦しくないよ、と。

しばし宙を見つめ、現状を客観的に考えてみた。

事業計画発表会まであと5日。資料提出までには、あと3日。

なーんも出来ていない。(ってか出来ない。)

上り坂か?と見せかけて・・・・、もっと急な上り坂だった。(はよ、やれよ。)

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