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あとひとつ

事業計画が今度こそ仕上がった。後付けのお題も片づけた。

そして休日が重なったKちゃんと一緒に野球をライブ中継で見ることが出来た。

今の施設に勤めた当初、IちゃんとKちゃんと私は元々口数が少ない方で、ちょっとしたきっかけがなければ永遠に仕事での申し送り以外口を利かなかったかも知れない。

それがひょんなことから一緒にキャッチボールをすることになったり、ずーーーっと後になって同じヤクルトファンだと言うことを知った。

あまり身の回りに野球好きの人がいなかったのでそれだけでも嬉しかったのだが、三人で腕組みして深刻に野球の話をしていると、今まで喋ったこともない阪神ファンや巨人ファン、楽天、ロッテ・・・と様々な人が話に加わって来るようになった。性別も年代も別々。ちなみに職種とかセクシャリティとかも別々。

あ、そうそう。野球の話がきっかけで色々喋るようになって驚いたことの一つにはうちの施設には男女含めて、そして外国人も日本人も、よくよく聴いて見るとXジェンダーやらセクシャルマイノリティが6人もいたというのがある。いや、みんなよく話してくれたなあ。いやいや、今日は野球の話に絞ろう。

清掃のおばちゃんとキャッチボール仲間のIちゃんに至っては、真のヤクルト好きで他の球団の選手を応援することはならん!というタイプなのだけど、私はヤクルトの試合を見ていても、敵に凄いプレーをする選手がいると大感動する。ファンになる。

野球の何が面白いのか?というと、一つは、そこにいる選手たちが運と才能と一流の負けず嫌い集団であるということ。運だけでもダメだし才能だけでもどこかで折れていただろうし、地元では天才だった逸材が自分以上の天才に出会っては愕然とし、また成長していく。

どのスポーツでもそうなのだろうけど、私の場合は、たまたま祖父と祖母がいつも野球とボクシングを観ていて、小さい頃からなじみ深かったというだけの話。

それで子供の頃から感じていたのは、どんなに活躍してその年に賞を取った選手ですら、その翌年登場する時にはピッチングフォームやバッティングフォームが変わっているという驚き。

一旦出来上がったものを崩すというのは右利きの人が左で文字を書くほどの不自由さではないか?と浅い想像力で考えるのだけど、もしかしたらそれ以上かも知れない。前の年、うまく行っていたら変えたくないって思うでしょ、普通。

心理学では自己肯定感信仰が未だに根強くて、必ずと言って良いほどポジティブシンキングをしろという傾向がある。必ずプラスになるイメージトレーニングをしろと。

しかし、その理屈で行くと、打者に至っては4割打てる人はほとんどいないわけだから、確実に失敗の方が多いということになる。じゃあ、先述の”ポジ”で行こうとすると、打てたら1割や2割であってもその時のことだけをイメージしろって話になる。

そんなことをしていたら、どんな天才でもあっという間にあの場から消えて行く。

身体能力だけの話ではなくて選手たちの凄いところは、半端ない負けず嫌いの人たちが、思い出したくもない失敗を思い出して、何度も何度も思い出して、そして何故打てなかったのか?あるいは何故打たれたのか?と目をそらさずに見つめ続けるところ。

いくつになっても毎年成長して行くところや、環境が変わっても、さっさと切り替えて何とか自分の力が発揮できるように持って行く力。皆それぞれの思いで観ているのだろうけど、私にとっては、その生きざまが野球の面白さの一つでもある。

私が好きな選手のプロ野球カードをちょいちょいプレゼントしてくれる人がいて、それを大事に白衣の胸ポケットに入れて仕事をしていると知ったある相談員さんが「看護師さんの仕事と関係ないでしょ。」と笑っていたけれど、あるっ!

失敗することがあって、ああすれば良かった、こうすれば良かったなということが沢山あって、また勉強して人間相手の仕事をしていく。そんな中で色んな選手のことを思い出して元気を出していることもある。ヒントを貰うこともある。

今日は、好投してその回を投げ切った後、すぐにベンチに走らずに、青木が帰って来るのをマウンドで待っていた田口ことマリモくんが素敵だった。きっとお礼を言おうと待っていたのだろう。

ハムの五十幡のあのプレー。よくあれを取ったなあ!という事の連続で、手首が折れたらどうすんのおおおお!ということもあった。しかし、ファンになった。

また、私は好プレーした後の選手のドヤ顔が好きで、それも楽しみの一つでもある。

偉大なる記録を確立した青木のインタビュー。家族やファンに感謝を述べるのはもちろんのこと、「誰にもまけない!と思ってやって来た。」という一言。そんなシンプルな言葉でも、あの一流の負けず嫌いばかりの集団の中で言えるというのがどんなに偉大であることか。

高齢者施設に勤めるKと私は中年でもあるが、ノリが古いため、そのマリモくんと青木のインタビューを見ながら、”えいえい、おー!”とカチドキをあげて、Iちゃんと清掃のおばちゃんとはラインの嵐。隣の人から「うるさい」とメッチャ叱られた。

ごめんなさい。気を付けます。

今日もありがとうございました。

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