夜行行列

昨年のとある夏の夜の夢から始まった。

それは普段見る夢とはまったく違う様相のものだった。

その夜、私は金縛りにあった。

前の家に住んでいる頃以来だったから2年以上ぶり。

そういうことは子供の頃から結構あったのだけど、過ぎ去ると現実に観たり体験したものも「あれは夢だったのかな?」という気がして来るし、その方が脳も整理しやすいのか、毎回そういうことにして来た。

でも、今回のはちと派手過ぎた。

その夜は金縛りになっても頭が起きているせいか、人の声はハッキリ聞こえる。この夜相方は夜勤だった。

頭の方向にマンションのベランダに面した道があるのだけど、そこは大通りから一つ入った一通の道。

その道に信じられないくらい大勢の人が通っている。足音。

がやがや言いながらゆっくり歩いていくが、そのうち笛をふくものが現れ、次は太鼓。そう、長い行列で最初の方はおごそかで段々騒がしい連中がついていっている。

もう歌うものあり演奏するものあり。

しばらくするともうそれは祭囃子のようなもの。

目にするものを歌にしていく人もいて「うっえきばち!あ、それ植木鉢♪」とか聞こえたときにはぞっとした。

ベランダに植木鉢を置いているから。より現実的に「こっち見てるな」と。

何故だか知らないが珍しいことに怖いと思った。観ているわけじゃないけど両手首を曲げてくるくる踊っているのもわかる。

途中、はっ!と覚めた。2時頃であたりはしーんとしていた。汗びっしょり。でも電気をつける気にもならなかった。まだ聞こえないだけで行列がそこにあるんじゃないかと思って。

何故だか見つかりたくないと思った。

一服して再び眠るとまた金縛り。また祭りような行列が進みながら立てている音や歌が聞こえてきたときには、やっぱりなー!電気つけなくて良かったなーと思う。しかし怖い。不思議な空気が立ち込めている。

金縛りが解けてしーんというのと、再び眠って祭囃子というのを繰り返して時刻は朝の5時半。

今度こそ朝だ。しんとなった。もう大丈夫。

聞こえているのはいつものOLさんのハイヒールで駅に向かってダッシュしている音。

ほっとした。

しかし、そのときまた異形のもの(?)の声が聞こえる。人数は2名。「いそげい、いそげい。」「なんでじゃ。まだ間に合うかのう。」と走っている。そしてOLさんとぶつかりそうになって「ぎゃん!あぶなかろう!あのアマ!」

何という喋り方。どこの方言?いつの時代?これ、ほんとに人の声?情報量が多くて引く。

OLさんは何も見えなかったのだろうか。

それにしてもそこで初めて笑ってしまった。

もう夜明けだよ。6時間くらい前に始まった行列だよ。間に合うわけないだろ。・・・・って、どこの何にに間に合わないのかは知らないけど。

あれは何だったのだろう。怖かったなあ。怖いけれどちょっと面白くて、夜勤明けで帰って来た相方に話してみた。すると思いもよらない話を聴いたのだ。

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