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要するに心のパーソナルスペース

先日、単発派遣で行った施設で、あたりまえのことなのだが見知らぬナースとペアを組んで動くことになった。

挨拶をして数分で気持ちがザワザワと騒ぎ出す。
その人は、出会い頭から自己紹介で始まるそのマシンガントークが止まらない。
「私、できないんです。ここでナースは初めてなんです。」と繰り返す。「もう一つ行っているところは、パートです。」と訊いてもいないことを喋っている。
文字にすると謙虚そうな言葉なのだけど、ボディランゲージが「優しくしてね。でも、言うこと聞いてね。私のことも敬ってね。」と言っている。
彼女の手が肩に触れようとする度に何度もさりげなく交わしてしまった。
この知らない人に気軽に触れようとする人たちも苦手なのだ。

「あかん。今日は仕事が進まないだろう。」と思ったのは、仕事には目が行かないタイプと組まされてしまったと悟ったから。

仕事より他人ばかり見ているタイプの人である。例え出会いがしらの相手であっても承認欲求をぶつけてくる。

よく知らないところで、まずは仕事を知ることが先決だと言うのに、その仕事すら進まないとなると致命的。出来るだけ集中して処置内容が書かれている紙に目を通そうとするのだが、いかんせん、その表は一枚しかない。

「よく分からないんです。」というこういうタイプに限ってそれを離そうとはしない。要するに仕切りたがる。

仕方がないので、出来るだけ見せて貰って「手分けをして動きましょう。」と提案したのが、気が付くといつも背後にいて人のことを見ている。そして「そういうやり方をするんですか?うちの施設では・・・」と講釈をたれる。まあ、進まないったらありゃしない。

派遣さんが来ることが多い施設だから、わざわざ”こういうふうにやって下さい”とマニュアルに書かれているのだ。だからその通りにしているのだが「こういう方法もあるって知ってます?」と、まだ喋り続けている。しかも、その内容は、ナースなら誰でも知っていることばかり。

それをいちいち説明する暇はないし。(いや、暇があったとて説明はしないだろう。)

その施設のリーダーナースと話していても、割って入って来て「ご報告です!」とべらべら喋り出す。
他人が自分以外を見ているのは耐えられないという心理状態らしい。
そんな人いるの?という話だが、無差別にこの心理状態に陥っては周辺の動きを妨害する人って案外どこにでもいる。

これは困った。と思いつつも仕事を終わらせることに集中していたのだが、そういう空気を察知すると、もうこのタイプは質問責めに近い感じで追いかけまわして来る。

私は色んなところでよくこういうタイプの人に目をつけられる。人間をそっとしておけない、人を見れば「こいつを攻略しなければ!」と思うタイプの人。
攻略って何だよ!?という話なのだが、後の時代に本人たちが出会い立ての頃のこの言動を、そう明かしていた。

例えば、初めて会った医師が私に患者さんの指示を出しつつ「これはね、誤嚥性肺炎と言ってね、気道に食べ物や飲み物が入ってね、これこれしかじか・・・」と延々とつまらないことを説明されることもあった。
「はい。」と幾度も返事をして頷き、最後には「ありがとうございます。」と言う。ある種の決めつけを持って、あまりにも得意そうに言っているのでまさか「知っとるわ!」などと言えないわけである。

そして、これもよくあることだが、数十分後に血相を変えて同医師が走って来られ「先ほどは失礼しました。」とこちらが恐縮するほど詫びて来られる。

新しいナースさんを雇えば、私には「ちょっとどきな。え?何?一緒に習いに行く?」的な態度を取られ、その人は大御所ナースさんのところへ行かれるのだが、やはり数十分後に震え声で「じ、自己紹介させて下さい。」と態度が変えて挨拶に来る。

知る人に「もうちょっと偉そうにして。」と言われるのだが、相手によって態度を変えすぎる人たちの意味がわからん。

またとあるタイプは「私の方がこんなに出来るのよ」というアピールをし続けてきて、とにかくその視線が邪魔で、よけて仕事内容を見なければならない。
そうすると気が散り過ぎてミスしそうになるのでイライラする。我慢の限界が来て牙を剥く。
「なんだろ?この分からない人をどうにかしなくては!」と思っている人に対して「はい。こういう動物でした!」と答えを出すという状況に陥る。ガルル!
そういう承認欲求はプライベートで満たして来い。となる。

ので、「あまり無理はしないでおこう。」ということで今回は早々に口を開いた。
ええ、何せ単発なんだから、一日しかない。一日は貴重だぞ。牙が出てしまう前に早期に解決せねば。

「あなたは2階、私は3階。それぞれ手分けをしてやる。二人でやらなければならないことがあったら二人でやる。
また、二人でも分からない場合は、ここのリーダーナースに確認する。
そして、黙ー--って私の背後に立たないこと。いいですね?」と少々早口で言うと素早く「はいっ!」と返って来て、以降妨害をやめてくれた。が、まだ遠くから見ておられたので疲れた。

そして帰り道、あきらかに後をつけて来ていたので必死にまく。
という精神状態だった。
私のこの「ヒトコワ!」の部分を治したいなと一瞬思うのだが、考えてみればお互い様なので気にしないことにした。

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