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なぜペルソナ5の「頑張れ怪盗団!」のシーンに違和感があるのか考えてみた

※このnoteはペルソナ5、ペルソナ5ザ・ロイヤルのネタバレを含みます。

最近、ペルソナ5ザ・ロイヤルのリマスター版の実況が解禁され色々な人が実況プレイをしている。
ペルソナ5はとても面白く、実況などを見ているとどのシーンも実況者・視聴者ともに盛り上がっていた。
ただ、ペルソナ5(無印)のラスボスにあたる統制神ヤルダバオト戦の演出シーンでは、コメント欄を見ると結構賛否が分かれているような感じだった。

賛否があった「頑張れ怪盗団!」のシーン

正直、自分もこのシーンはゲーム中でなんとなく違和感があった。
のでその違和感について考えてみて言語化してみた。
※自分はプレイ済みです。


・違和感の正体

この違和感がなぜ起こるかについて端的に言ってしまうと、
演出がペルソナ5の主題とかけ離れたものになってしまっているから
である。

・ペルソナ5の主題とは

ペルソナ5の主題は自分の信念を貫くことということができる。

これはヤルダバオト戦直前の仲間のセリフからも読み取ることができるし、

ヤルダバオト直前の竜司のセリフ

ペルソナシリーズのディレクターである橋野桂氏のインタビューでもそのような趣旨の発言を読み取れる。

そして『ペルソナ5』では、まわりの環境によって自分らしさを抑圧され、未来まで奪われそうになっている主人公たちが、荒ぶるシャドウとも言うべき“本音”を鎖でつなぎながらも解き放つ。(中略)現実で本音を爆発させたら社会的にうまくいかないことも多々あると思いますが、ふだんは抑え込んでいる想いこそが、人の個性の源だったりもしますし、それを大いに発散していく本作のゲームプレイで、スカッとした心地になってもらえればと。

『ペルソナ5』はどうして“学園ジュブナイル”なのか? ディレクター・橋野桂氏による特別コラムから、シリーズの深層を知る【前編】(1/2)

ここでは、あくまで自分の本音や自分らしさを貫く・表出させることが大事というだけであって他者の評価は物語の主題とは別問題である。

・問題のイベントシーンについて

上記を踏まえてイベントシーン前後の流れについて改めて考えてみる。

イベントシーンでは怪盗団がヤルダバオトに負けそうになるも、怪盗団の活躍を目にした民衆に応援され、その結果主人公がペルソナのサタナエルを覚醒させ、勝利するという流れだ。

このシーンを見ると、民衆から応援されたことによってラスボスを倒す力を得たように見えてしまう。
ゲームの主題が自分の信念を貫くことであるにも関わらずだ。

ゲームプレイ中、このゲームの主題を意識しておらずともヤルダバオト直前の仲間のセリフで”ほかの人がどう思うかに関係なく、自分の信念を貫こう”と決意しているため、結構違和感を覚えた人もいるのではないだろうか。

・まとめ

以上の内容をまとめると、ペルソナ5のラスボスのイベントシーンに違和感を覚えるのは、ゲームの主題(メッセージ)として自分の信念を貫くことを示しているにも関わらず、最後の最後で民衆からの人気が大事かのように言われているように感じるからである。


・(追加)なぜこのようなイベントシーンになってしまったか

ここまでで、なぜラスボス戦のイベントシーンに違和感を覚えるかについて述べてきたが、プラスアルファとしてどうしてこのようなイベントシーンになってしまったのかについても考えてみる。

要因としては、ゲームのテーマを優先しすぎて主題が後回しにしてしまったからではないだろうか。

このゲームのテーマはピカレスクロマンであるとディレクターの橋野氏も述べていることからわかるように、

今作は等身大の「学園ジュブナイル」と「ピカレスクロマン」の融合に挑戦します。

『ペルソナ5』開発チームより

弱者が成り上がっていく物語であることが明示されている。
成り上がりの最終地点として、民衆の人気を得て巨悪を倒すというのはピカレスクロマンのラストとしては自然である。
ただあまりにそちらの方向に行き過ぎてしまい、主題のほうが放っておかれてしまった結果というのがこのようなイベントシーンになってしまった要因であるといえる。

・(補遺)ペルソナ5ザ・ロイヤルについて

ペルソナ5のラストは上記の形であったが、続編であるロイヤルのほうでは反対に違和感のないラストであったといえる。

ロイヤルでは丸喜によってみんなの願いが叶う理想的な世界が作られる。
ただみんなの願いが叶う理想的な世界であるにも関わらず、怪盗団のメンバーの信念に従ってその世界を否定し、民衆の意見とは関係なしに丸喜を倒して、元の世界に帰る。

ここには他者の評価は介在しないし、一見、民衆が否定しづらいものを怪盗団が否定することで、自分の信念を貫くことという主題がより一層強調されている。


©ATLUS ©SEGA


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