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ジミーペイジあれこれ

ジミー・ペイジを語ることは、とりもなおさずレッド・ツェッペリンを語ることである。この点まず御諒解いただきたい。

ジェフ・ベックの特徴を「爆発手前で寸止め」と書いた。他方ジミー・ペイジは大爆発。
それはレッド・ツェッペリンというバンドあっての事に他ならない。

渋谷陽一氏が指摘するとおり、ツェッペリンはスーパーヘヴィ級のバンド。ジミーペイジのギターはもとより、ボンゾの太鼓、ジョン・ポール=ジョーンズの地味だが確実なベースプレイ。
そしてロバート・プラント。

三大ギタリストがクラプトン、ジェフベック、ジミーペイジなら、自分は英国三大ボーカリストをミック・ジャガー、フレディ・マーキュリー、ロバート・プラントだと思う。
60年代~70年代初頭、我が日本では都はるみでも島倉千代子でも、あるいは奥村チヨでも、まず「歌手」がある。バンドはあくまでバックバンドで、当該歌手が歌いいいように演奏するのみ。
GSにしたって、基本はジュリーやショーケン。トッポやサリーのファンもいるにはいたが、当時どれだけ「バンド」として評価した者がいただろう。
この認識を変えたのが、ミック・ジャガーでありロバート・プラント。前で歌っていてもそれは「歌手」ではなく、「ボーカリスト」。あくまでバンドの1パート。
今の人に理解できるかどうか分からないが、これは当時の日本人にとってコペルニクス的転回であった。

ロバート・プラントは実際、こう言っている。
「俺の楽器は、言葉だ」と。

こんな4人の「バンド」だからこそ、ジミー・ペイジは安心して、大爆発できたのではないか。

◆Rock' n 'Roll ~ Celebration Day 

https://youtu.be/IbW5K2F1N28

https://youtu.be/0GsxngIzc3c


ジミーペイジのギターは、「ひきつけ」にも似ている。痙攣。
本来は島倉千代子、〝歌手〝たるロバート・プラントが、むしろそれを宥めている。
◆Since I've Been Loving You

https://youtu.be/4nNajr1_2AQ

◆見よ、このアクションを。The Ocean

https://youtu.be/aFZllvkF934

自分はこの映画を高2の時に観た。博多は中洲大洋で。
田舎ではやっていない洋ピン(意味がぜんぜんちがいます)の映像。動くツェッペリンを初めて見て、衝撃を受けた。ことRock' n' Rollのジミーのソロでは、映画館じゅうにどよめきが起こった。
次は例のバイオリンの弓もちろん、リフの宝庫。わたしに30分ください。
◆Dazed  and Confused

https://youtu.be/ZQgYn23Xvck

怪奇。これぞ怪奇である。
レッド・ツェッペリンというバンドは、英国でなければ決して生まれなかっただろう。それは音に明らかで、映画では、ランカシャーにヨークシャー、スコットランドに至る風景が、彼らの出自(英国人は概ねケルト由来)を表している。
そしてシェークスピア/演劇ともども、英国が誇る伝統は、ドラキュラを始めとする怪奇文学である。

「クラプトンあれこれ」の副題を〝時間について〝とするなら、ジェフベックのそれは〝孤高について〝。

https://ameblo.jp/darshaan/entry-12696195109.html

https://ameblo.jp/darshaan/entry-12697009356.html

そしてジミー・ペイジ、ツェッペリンのは「時代あるいは歴史について」。

現在にもホワイト・ストライプスや先日紹介したロンドン・グラマーなど、いいバンドはたくさんある。だが三大ギタリストのリアルタイムに生まれついたのを、自分は幸甚と思う。
30年後40年後に残るバンドはいくつあるか。生ける伝説として聴き継がれ、語り継がれるバンドは?

小林秀雄は「歴史とは、子を失くした母の哀しみである」と言った(「ドストエフスキーの生活」序「歴史について」)。
然して歴史とは、今なお続く人々の営為である。飴のように長く伸びた時間のなかで、人は思いを抱えつ今なお生きている。よしんば死んでも、生きている。
だが小林秀雄は「生ける伝説」といふことを知らないか、知っていても一笑に付したことだろう。
◆そんなあなたにWhole Lotta Love(溢れる愛を)

https://youtu.be/uiLKT5rPHBA


いまやジミー・ペイジはすっかり英国紳士。黒魔術やってたくせに。
先年広島を訪れ、「この惨禍を世界に伝える」と約束した。


斯くして大英帝国と日本は似ている。洋の東西こそ分かれちゃいるが、同じく小っぽけな島国。ロンドンはナチスに大爆撃を受けたし、大日本帝国時代の日本も、広島長崎に原子爆弾を落とされた。
ただ、両国の大きな違いは「そこで何を学んだか」ということ。これは戦後ドイツにも明らかで、事実を事実として受け止めあるいは分析したかどうか。

英国は、かつて世界中に植民地を持っていた。大英博物館には旧植民地から分捕って来た物を陳列してある。
ジミー・ペイジ自身、旧植民地たる印度の血が4分の1ほど入っている。

英国は、かつての植民地と「英連邦」という親睦団体を結んだ。そのネットワークを通じて情報を得、かつ分析し、生き延びるよすがとしている。
我が日本は?

ツェッペリンのありようは、そんな英国そのものを表している。植民地あるいはシェークスピア、あるいは怪奇文学を通じた「英国の伝統」を、音で表している。
伝統とは、かくも複雑怪奇なものなのだが、だからこそ彼らは「生ける伝説」なのかも知れない。


※ケネディセンター名誉賞、レッド・ツェッペリン受賞の巻。

https://youtu.be/ra-itTKnFaw

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