約100年を超えて 共鳴するアート ーシンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート @ポーラ美術館
ポーラ美術館初の"現代アートの展覧会"。といっても、現代アートだけではなく、19世紀から20世紀の作品を中心としたポーラ美術館のコレクションと、現代アートを12のテーマで出会わせる展示です。
シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート @ポーラ美術館
タイトルの「シンコペーション(切分法)」とは、音楽において軸となる拍の位置を意図的にずらし、リズムを変化させることで、楽曲に表情や緊張感をあたえる手法。近代と現代のアートを出会わせることで、どんなものが見えてくるのでしょうか?
(※ セレスト・ブルシエ=ムジュノ「クリナメン v.7」以外は撮影可と確認した上で撮影しました。)
① 圧巻のコレクション作品
ポーラ美術館の核となる西洋近代絵画のコレクションは、19世紀から20世紀の作品約400点を中心としたコレクション。
今回はこのなかから、モネ、セザンヌ、ピカソの絵画、ロダンの彫刻等と、ここ10年ほどの間に制作された現代アートの作品を出会わせています。
(「睡蓮」 / クロード・モネ)
モネの『睡蓮』や、セザンヌの「砂糖壺、梨とテーブルクロス」をはじめ、ポーラ美術館のコレクションは、アーティストが著名というだけでなく、その中でも良い作品が集まっているように感じられ、このコレクションを見ていくだけでも満足感のある展示です。
② ユニークなテーマと構成
12のテーマでコレクション作品と現代アートを出会わせる展示ですが、こんなところに共通性を見出しているのか、といった、ちょっとひねったテーマも面白い展示でした。
(「まなざしの間で」/ アリシア・クワデ × 「姿の見えない眠る人、馬、獅子」 / サルバドール・ダリ)
例えば、石塚元太良×ルネ・マグリット《偽る風景》では、写真家・石塚元太良さんの氷河の写真と、マグリットの絵画「前兆」を併せて展示。現実離れした氷河の風景が続く中に、突如、だまし絵のようなマグリットの絵画が現れます。マグリットの絵を前に、「わ〜、こっちの写真もすご…って、あれ?こっちはひょっとして絵??」とまさに”偽”られている方も。
(「Le Conte_Glacoer#001」 / 石塚元太良 × 「前兆」 / ルネ・マグリット)
大規模なインスタレーション作品も。アブデルカデル・バンシャンマ × ギュスターヴ・クールベ《神秘の大地》では、広大な展示室を使ったアブデルカデル・バンシャンマ「ボディ・オブ・ゴースト」の引き込まれるようなモノクロのドローイングによるインスタレーションの中に、岩山を描いたクールベの「岩のある風景」が置かれ、小さい作品ながらもそこにまた視線が集中してしまいます。
(「ボディ・オブ・ゴースト」 / アブデルカデル・バンシャンマ × 「岩のある風景」 / ギュスターヴ・クールベ)
③ 「音」も心地よい展示
今回の展覧会タイトルは「シンコペーション」と音楽に関連するものになっていますが、展覧会全体の「音」の配置も心地よいものでした。
インスタレーションや映像など、「音」の出る作品も複数展示がありましたが、別の作品の音が混じり合うことなく、でもヘッドホンなども使わず、心地よく音と作品のコラボレーションを楽しむことができる構成になっていました。
(「悪魔たち」 / オリヴァー・ビア)
特に、プールに浮かべた陶磁器のぶつかる音を聞くセレスト・ブルシエ=ムジュノ「クリナメン v.7」の心地よい音は、クロード・モネの『睡蓮』を見ながら、その先に何があるのか期待し、実物を見るとその動きの面白さにずっと見入ってしまうような作品でした。
また、屋外の「森の遊歩道」の中には、スーザン・フィリップスの「ウインド・ウッド」も。遊歩道を歩きながら、場所によって風景とともに音の重なり方の変化を楽しめる作品でした。
展覧会は12/1(日)まで。森のなかの心地の良い美術館で、時間を超えた作品の出会いを楽しめます。
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【展覧会概要】
■シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート @ポーラ美術館
会期:2019年8月10日(土)~12月1日(日)
会期中無休
時間:9:00~17:00
入館料:大人1,800円、シニア割引(65歳以上)1,600円、大学・高校生1,300円、中学・小学生(土曜日無料)700円
ポーラ美術館の開館以来初となる現代美術の作家たちに焦点を当てた展覧会。タイトルにある「シンコペーション」とは、音楽において意図的にリズムをずらすことで楽曲に表情や緊張感を与える手法のこと。現代作家たちの多様で刺激的な作品が、ポーラ美術館の所蔵するピカソやモネ、セザンヌなどの作品と共鳴することで、違った角度から近代の巨匠の魅力を見つけることができる。
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