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初期作品から近作まで。 草間彌生の ”ヴィヴィッドな" モノクローム世界。 / 神秘と象徴の中間:草間彌生のモノクローム 展(草間彌生美術館)

草間彌生さんの作品を思い浮かべるとき、「カラフル」なイメージを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。草間彌生美術館ではじまった「神秘と象徴の中間:草間彌生のモノクローム」展は、そのイメージとは異なる、”モノクローム”の作品で構成された展覧会。しかしながら、その ”モノクローム” の作品はとても ”ヴィヴィッド” だったのです。

この記事では、草間彌生美術館で開催中の「神秘と象徴の中間:草間彌生のモノクローム 展」をご紹介します。

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草間彌生美術館 外観

1) 初期作品も多数。草間彌生作品のエッセンスが感じられる白黒の作品群

各フロアが1つの展示室であり、5フロアにわたる草間彌生美術館。2階は白と黒のモノクロームの空間。地の質感も残る 125.3cm✕91cmの巨大なキャンバスの上に、白い油絵の具で緻密に編み目を書き込んだ初期の作品 ≪無限の網(1)≫ (1958年) が印象的です。(※2階は撮影NGのため写真はありません)

床面には、バットの中に多数の銀色のソフトスカラプチャーと調理器具がぎっしりと詰め込まれた≪希死≫(1975-76)。「脅迫」「集積」「反復」といったキーワードを想起させ、その中でも特に「脅迫」のイメージを強く感じさせます。

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2Fの展示作品(展覧会チラシより)

別の壁面にはやはり1950年代から1990年代までに制作された版画(エッチング)作品が並びます。いずれもE.A / A.Pと書かれており、ご本人の手元にあった作品たちであることが伺えます。≪かぼちゃ軍団'85(黒)≫ (1985), ≪芽生え≫(1995)など、柔らかくゆがんだモチーフがが画面を埋め尽くす様子は、対面するソフトスカラプチャーの作品群と呼応するようにも感じられます。

草間さんの作品といえば、そのカラフルな色使いを連想してしまうこともあるが、この白黒の作品群は、その色から離れ、反復、オールオーヴァー、自己消滅、オブセッション…といった、草間さんの作品のエッセンスを存分に感じられるようです。

2) 空間を覆い尽くす、ヴィヴィッドなモノクローム(単色)作品群

3階へ足を運ぶと、白黒の展示室から一転。そこには床面から天井まで、最新の絵画シリーズ「わが永遠の魂」の色鮮やかな作品が並び、足下には、鏡面のステンレスで制作された流線型のオブジェ≪雲≫(2109)が多数並びます。オブジェには壁面の絵画作品がゆがみながら映り込み、展示空間全体が色で溢れているようにも感じられます。(※3階も撮影NGのため写真はありません)

これがモノクローム?と、一瞬戸惑いますが、それらの絵画は、いずれも地の色にモノクローム(単色)の描線で描かれている作品。初期作品のような緻密な描線とは異なり、しかしながら巨大な画面を綿密に埋め尽くすその様子は、どちらが地でどちらが描線なのか曖昧になり、画面全体から強い圧を感じます。

絵画作品を中心としながら、その作品世界を体感するインスタレーションのようにも感じられる展示室です。

3) 鑑賞者も作品に加わる、参加型の《フラワー・オブセッション》も

4階では、前回の展示から引き続き≪フラワー・オブセッション≫(2017/2020)を展開。鑑賞者は入り口でヒマワリの造花やステッカーを受け取り、会場の好きな場所に貼り付けることができます。引き続きの展示となるため、すでに会場は多数の花に埋め尽くされ、こちらは黄色一色のモノクロームの部屋となっています。

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≪フラワー・オブセッション≫ / 草間彌生 (2017/2020)

また、1階には鏡で構成された作品 ≪去って行く冬≫ (2005)も。外観はシンプルで展示空間に溶け込むようですが、その中を覗くと、水玉模様のような丸窓が延々と続く世界を体感することができます。

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≪去って行く冬≫ (部分) / 草間彌生 (2005)

「神秘と象徴の中間:草間彌生のモノクローム」展は、単色の世界で草間作品のエッセンスを感じられるような展覧会であり、また、「モノクローム」の言葉のイメージを覆す独特の色彩感覚を体感できる展示でもありました。

展覧会は 2021年12月26日(日)まで。入場は日時指定の完全予約・定員制。チケットは美術館ウェブサイトのみで販売し、美術館窓口では販売していないため、気になった方は是非公式サイトをチェックしてみてください。

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【展覧会情報】神秘と象徴の中間:草間彌生のモノクローム

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URL:https://yayoikusamamuseum.jp/exhibition/upcoming/
会場:草間彌生美術館
会期:2021年4月29日(木)~ 2021年12月26日(日)
開館日:木・金・土・日曜日および国民の祝日
休館日:月・火・水曜日
開館時間:11:00〜17:30
観覧料:一般 1,100円(税込) 小中高生 600円(税込)
※未就学児は無料。団体割引の設定はございません。
入場時間:
①11:00~12:30(11:30までに入場)
②12:00~13:30(12:30までに入場)
③13:00~14:30(13:30までに入場)
④14:00~15:30(14:30までに入場)
⑤15:00~16:30(15:30までに入場)
⑥16:00~17:30(16:30までに入場)
チケットはコチラから

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