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「知覚」と「認識」で空間を捉える ーFALSE SPACES 虚現空間 @トーキョーアーツアンドスペース本郷

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2種類の”マケドニア”産ワイン
ディスプレイの中身と現実世界が溶け合ったような写真
実在しない島の描かれた地図…

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(永田康祐 展示風景)

 何の関係もないように見えるこれらのモノが、展示を見終わるとつながって見えてきます。

FALSE SPACES 虚現空間 @トーキョーアーツアンドスペース本郷

チラシ

 日本と香港のメディア・アーティスト3名ずつの展示です。といっても、”日本らしさ”・”香港らしさ”のような地域性を感じる展示ではなく、もっと普遍的な、空間と時間の認識の仕方を、6人6様のメディアで表現するような展示でした。

 このなかで最も印象的だったのが、冒頭に書いた永田康祐さんの作品。

 あいちトリエンナーレ2019にも出展されていた永田さん。そちらでも展示されていたフォトショップを使った写真シリーズがとても面白く印象的だったのですが。

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(あいちトリエンナーレ2019での「Function Composition」シリーズ)

 この展示では、同じ作品シリーズを含みつつ、「作品」とは言えないような”製品”に、音声ガイドも組み合わされた展示になっています。

 一見、なんの関連も見つけられない製品ですが、音声ガイドで説明を聞いていくと、”実在”することとそれを”認識”できること、”視覚”で見ることと”脳”で見る(知る)ことの違い、人とコンピューターがそれぞれ”認識すること”の違いと共通点…といった内容に、星座のように作品間のつながりが見えてきます。

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(「Function Composition」 / 永田康祐)


 同じフロアには、香港のアーティストWAREによる、見慣れた風景を写真で”見ること”と、光の印象で“知覚すること”の対比を表すような映像作品「ニモニック」。

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(「ニモニック」 / WARE)

 また、別のフロアでは、ミニチュアのフィギュアや風景の中、機械的にビデオカメラを動かすことで、連続した何層ものイメージを作り出す、伊藤隆介さんによる機械式装置と映像の作品「自然主義」「フォッサ・マグナ」と、時間と空間が歪んだような奇妙なアニメーションの中に、過去の香港の建築や文化を表現した、ステラ・ソーによる映像インスタレーション「ベリー・ファンタスティック」。

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(「フォッサ・マグナ」 / 伊藤隆介)

 また、空港のなかの風景を、時間の方向と空間の方向に引き伸ばして映像と3D空間に展開した津田道子さんによる「旅程」シリーズ(キャロライン・バーナードとの共同制作)と、香港の地下鉄駅の風景をモチーフに、鑑賞者と写真との物理的な関係を強制的に変えることによって、写真のなかの空間の広がりを感じるようなン・ツー=クワンによる「ソリチュード・シネマVer. 3」など。

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(「旅程」 / 津田道子、キャロライン・バーナード)

 フロアごとに、日本と香港のアーティスト1名ずつ、緩やかなテーマのつながりも感じさせる展示になっていて、また、展覧会全体としても空間と時間の認識の方法について考えるような構成となった、とても面白い展覧会でした。

 2019年11月10日までです。

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■ FALSE SPACES 虚現空間 @トーキョーアーツアンドスペース本郷(本郷)

チラシ

会期:2019年10月12日(土) - 2019年11月10日(日)
休館日:10/15、21、28、11/5
時間:11:00 - 19:00
入場料:無料
アーティスト:伊藤隆介、津田道子、永田康祐、ン・ツー=クワン、ステラ・ソー、WARE

東京と香港は、その都市の規模に対する人口の多さに順応するために、建物は上へ上へとせり上がり、公共空間でのパーソナルスペースは狭小化されるなど、空間に対して共通の課題を抱いています。また、空間とは、地理や場所といった物理的状態に加え、私的、心理的、そしてサイバースペースに至るまで観念的な空間も含め様々な解釈が可能な概念です。そしてアーティストは自身が追い求める世界観を表現するために、現実世界とは異なる空間を構築し作品として展開させていきます。 本展では、日本と香港で活躍するメディア・アーティスト6組の作品をとおして、さまざまな空間認識を探求していきます。


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