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地球の生命は”猫”から始まった?!|ヤノベケンジ:太郎と猫と太陽と(岡本太郎記念館)

今年4月、GINZA SIXの吹き抜け空間に巨大な作品が登場しました。太陽の塔のような宇宙船「LUCA号」から飛び出す無数の「SHIP’S CAT/宇宙猫」たち。

GINZA SIX 吹き抜けアート《BIG CAT BANG》/ ヤノベケンジ

躍動感に溢れてポジティブな気分になれるこの作品の裏にある物語が丁寧に描かれた展覧会「ヤノベケンジ:太郎と猫と太陽と」展が、表参道の岡本太郎記念館で開催されています。


▍GINZA SIXと岡本太郎記念館、“ふたつでひとつ”の展覧会

会場内は、猫、猫、猫…!!!

岡本太郎さんのマネキン人形にも!

本展は、”現代社会におけるサヴァイヴァル”をテーマに、機能性を持つ大型機械彫刻を制作する、ヤノベケンジさんの個展。ユーモラスな形態に社会的メッセージを込めた作品群を制作し、その作品の一部はパブリックアートとしても観ることができます。

今回のテーマ〈BIG CAT BANG/猫大爆発〉は、”宇宙船「LUCA号」に乗って地球に到達した「SHIP’S CAT/宇宙猫」が無機質だった地球に生命を着床させた”という物語。

GINZA SIXの作品は、「命の種」を地球にまくため、「どにゃ〜〜〜ん!」と宇宙船から宇宙猫たちが飛び出す瞬間を表現したインスタレーション。一方で、岡本太郎記念館での展覧会では、その物語が立体作品やドローイング、映像、インタビューなどで多層的に表現されています。

《宇宙船「LUCA号」》

宇宙船「LUCA号」の大型の彫刻と、太陽の塔の内部の対比も。LUCA号の中は無数のネコの顔に、そして太陽の塔の背面にある「黒い太陽」の図も、しっかりネコの顔になっています。

《宇宙船「LUCA号」》背面の「黒い太陽」も猫に。

漆塗りのSHIP’S CATには、太陽の塔の内部にある「生命の樹」を模したネコたちも。

《赤黒漆生命樹猫》

展示室の壁面には、作品のコンセプトが直筆のドローイングで説明されています。

壁面に描かれた今回の作品のコンセプト。

▍地球の「生命」は宇宙から来た? 岡本太郎との時代との対比も

ヤノベケンジさんが岡本太郎記念館で個展を開催するのは、2011年以来2回目。

1965年に大阪で生まれ、幼い頃に1970年の大阪万博会場近くに引っ越したというヤノベケンジさん。万博閉会後の会場で、解体されていった「未来都市」の光景を「未来の廃墟」と捉え、その後、《アトムスーツ・プロジェクト》でチョルノービリと大阪万博跡地などを舞台にした作品を制作しています。

太陽の塔の内部には《生命の樹》があります。

また、2003年には、《アトムスーツ》を着用して《太陽の塔》の内部に入り、「黄金の顔」まで登って未来の出口の先を見るプロジェクト《太陽の塔、乗っ取り計画》も行いました。岡本太郎さんや太陽の塔は、過去の作品からもつながっているんですね。

「はじまりは爆発だ!!」

今回、宇宙から来たネコたちが「いのちの種」を地球にまいていったという物語は、地球上の生命の起源が地球の外から来たという”パンスペルミア説”から着想を得たもの。近年、「はやぶさ2」が宇宙から持ち帰った砂にアミノ酸が含まれていたことなどから、その可能性の根拠が強化されています。

ドローイングも多数展示。

《太陽の塔》の内部には、アメーバなどの原生生物から爬虫類、恐竜、そして人類に至るまでの生命の進化の過程を表現した高さ41メートルの「生命の樹」があります。太陽の塔がつくられた当時は、地球の生命は地球上で発生し進化したという「地球説」が中心でしたが、50年を経て、その可能性が変わってきたところもひとつの対比となっているようです。

宇宙船「LUCA号」のお腹のなかには本物の隕石もおさめられています。

宇宙船「LUCA号」の中には隕石が。

▍会場中はネコでいっぱい!様々なSHIP’S CATたち

会場の岡本太郎記念館は、生前の岡本太郎が42年間にわたって住まい、作品をつくり続けた南青山のアトリエをミュージアムに改装した施設。作品制作が行われた「アトリエ」や、応接間の「サロン」には当時の空間が残っています。

「サロン」の展示風景
「アトリエ」の展示風景

この空間にも多くのSHIP’S CATをモチーフにした作品群が展示されています。岡本太郎の作品や、マスプロダクトたちとSHIP’S CATたち。どちらもエネルギッシュな岡本太郎作品と小さなSHIP’S CATたちがともに遊ぶような賑やかな空間です。

そして、岡本太郎の彫刻と植物が渾然一体となった庭にも、大きなSHIP’S CATが。こちらのSHIP’S CATには美しい翼も生えています。

お庭の展示風景

巨大な作品も並ぶ一方で、会場の壁や柱には小さなイラストも。こんな隠れた作品を探すのも楽しいです。

「生命はどこから来て、そしてどこに行くのか?」という壮大なテーマを掲げながらも、愛嬌のある作品たちを楽しみ、元気なSHIP’S CATたちと岡本太郎さんの作品の両方からエネルギーをもらえるような展覧会です。

会期は2024年7月12日(金)〜2024年11月10日(日)。展覧会初旬でも混雑するほど人気なので、早めに訪問するのが良さそうです。

【展覧会概要】 ヤノベケンジ:太郎と猫と太陽と

岡本太郎記念館外観

会場:岡本太郎記念館
会期:2024年7月12日(金)〜2024年11月10日(日)
開館時間:10:00~18:00
休館日:火曜日(祝日の場合は開館)、保守点検日
観覧料:一般 ¥650、小学生 ¥300
URL:https://taro-okamoto.or.jp/exhibition/%e3%83%a4%e3%83%8e%e3%83%99%e3%82%b1%e3%83%b3%e3%82%b8%ef%bc%9a%e5%a4%aa%e9%83%8e%e3%81%a8%e7%8c%ab%e3%81%a8%e5%a4%aa%e9%99%bd%e3%81%a8/

展覧会訪問前に気になるアレコレまとめ

撮影可否:可能
入館予約:不要
会期中展示替え:なし
音声ガイド:なし
図録:なし
その他:
・会場ではSHIP’S CATフィギュアのカプセルトイをはじめ、多くのグッズも販売されています。
・館内にはロッカーがなく、展示室も広くはないので、小さめの荷物での訪問がオススメです。

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