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地域で障害のある子どもたちを一体的にサポートする。 複合施設オープンに向けた想いとは

株式会社PLASTでは2023年9月より、複合施設(生活介護、重症心身障害児デイサービス、訪問看護、就労継続B型)がオープンする予定です。今回、その責任者である下野裕宣さんに、オープンまでの経緯、施設の展望、スタッフと共有したい想いについて伺いました。

下野裕宣(プラスト訪問看護ステーション)
理学療法士免許取得後、2006年より神戸市特別支援学校にて勤務する。2020年4月に株式会社PLASTに入職し、プラスト訪問看護ステーションにて小児部門を担当している。2023年9月に立ち上げ予定である複合施設の責任者を務める。

重度の障害を抱えるお子さんが「ぶつ切りの支援」を乗り越えるために

-2023年9月にオープンする複合施設について教えてください。

生活介護、重症心身障害児デイサービス、訪問看護(小児部門)、就労継続支援B型が関わる複合施設です。それぞれ違った役割を持つ事業所が集まって、重度の障害を抱えるお子さんへ「ライフコースサポート」の実現を図ります。

*ライフコース:個人がたどる多様な人生のあり方、道筋の束という概念
*ライフコースサポート:地域で障害を抱える子どもたちのライフコースを一体的かつ場面に応じてサポートすること

高校3年生の利用児さんだったのですが、訪問リハビリのとき「うちの子は来年からニートやねん」とお母さんから言われたことがあります。最初は意味がよく分からなかったのですが、話を聞いていくと、その利用児さんの行き先がないということが分かりました。

-重度の障害を抱えるお子さんは高校を終えると行き先がないのですか。

医療依存度の高い重度のお子さんの場合、18歳までは「教育」という枠組みのなかで学校へ通うことができます。しかし、18歳を超えて学校を卒業すると「教育」から「福祉」という枠組みにて支援を受けます。

そうなると、多くは生活介護というサービスを利用することになります。しかし、医療依存度の高いお子さんでは、利用できる事業所がとても少なく、行き場がなくなってしまいます。

-下野さんの関わった利用児さんもその状況だったのですね。

その通りです。人工呼吸器管理が必要な重症度であったために受け入れ先がなく、「ニートになる」という状況でした。

これは多くのお子さんが直面している問題です。利用できたとしても1つの事業所を週5回利用することは叶わず、2~3事業所を利用してなんとか週5回の通所を行っている状況です。利用の内諾をもらっていたにも関わらず、見学に行くと断られるという場合もあります。

-かなり厳しいですね。そうなると、必然的に家族介護になってしまう…

もちろん訪問系のサービスを利用しますが、利用時間は一日に1時間程度です。必要最低限の入浴だけをなんとか済ませる…といった状況にあります。やはりご家族の負担は大きいですよね。活動や社会参加だけでなく、そもそもの「健康的に過ごす」ということが難しいお子さんもたくさんいます。

-教育から福祉に切り替わることで関わるスタッフも大きく変わり、利用できても異なる事業所となる…これもお子さんやご家族さんにとって大きな負担になりますよね。

僕はその状況を「ぶつ切りの支援」と呼んでいて、大きな課題だと考えています。もちろんそれぞれの事業所が連携を取ってはいますが、ゼロからお互いを知り、ゼロから関係性を構築していかなければなりません。大きな負担ですよね。

複合施設だから実現するコラボ、商店街だからできる活動

-複合施設になることで、この課題を乗り越えられるのでしょうか。

18歳まではヒミツキチ(重症心身障害児デイサービス)を利用し、18歳からは生活介護を利用することができます。複合施設という馴染みある場所で顔見知りのスタッフと関わり続けることが可能となり、「ぶつ切りの支援」にならない状況を作り出せると考えています。

-就労継続支援B型とはどのような連携をとるのでしょうか。

一例ですが、就労継続支援B型が創作活動(アート活動)を行う予定ですので、お子さんたちとのアートコラボを検討しています。就労継続支援B型の利用者さんたちが創作するアナログアートと重度の障害を抱えるお子さんたちがテクノロジーを使ったデジタルアートを掛け合わせます。また、これらを販売や展示することで、社会との繋がりも構築していきたいです。

-かなりたくさんのことが実現できる施設になりそうですね。

他にも、株式会社PLASTの良さでもある商店街での事業展開も活用していきたいです。商店街のなかをたくさん歩く、駄菓子屋さんに買い物に行く、駄菓子屋さんで店番をさせてもらう…やってみたいことはたくさんあります。

コンセプトを伝え、一緒に作り上げていくために

-複合施設のオープンに向けてどのような課題を感じていますか。

いまは自分のなかにある「ライフコースサポート」というコンセプトをスタッフみんなと共有する難しさを感じています。お子さんたちを取り巻く状況を知るためには様々な制度も理解しなければならないため、時間をかけてスタッフと話す必要を感じています。

-スタッフが同じ方向を向かなければ「ライフコースサポート」は実現できませんよね。

そうですね。複数の事業所が縦割りとなっては意味がありませんので、事業所という考え方を超えてと言いますか…むしろ事業所という意識をなくしていきたいと思っています。そのため、スタッフには「繋ぐ」を意識して欲しいですね。

-言葉では分かりますが、どう体現するかが難しそうです。

その点については、僕が現場で実際に働いている姿を見てもらいたいです。話すよりも手を動かす方が得意なので、そこから感じていってほしいです。

-下野さんの背中を見ろ!ということですね。最後に、オープンまでどのような準備をしているかを教えてください。

現在(2023年5月)は設計士さんとお話ししながら、建物としての大枠を作り上げています。手洗い場はどこに位置するか、蛇口は何個必要か…このような細かなところまで考えています。7月以降には工事が着工となりますので、同時進行でDIYにて棚や机を作っていきます。業務の合間や業務後に時間を取る予定なので、スタッフみんなにも参加してもらって、一緒に場所を作り上げていきたいですね。

▼複合施設(名称未定)

事業内容:生活介護、重症心身障害児デイサービス、訪問看護(小児部門)、就労継続支援B型ワークスペース
事業コンセプト:ライフコースサポートの体現
事業開始予定日:2023年9月~

株式会社PLAST HP

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