目の前にある課題を事業によって乗り越える。株式会社PLAST創業から現在までのストーリー
2014年に株式会社PLASTを設立した代表取締役の廣田恭佑さん。翌年にデイサービス「プラスト新長田」をオープンさせ、その後は一年に一店舗以上のペースで事業展開を行っています。今回、創業のきっかけ、事業展開の背景、今後の展望をお聞きしました。
「もっとリハビリできれば良くなるのに…」を乗り越えるためにスタートした個人事業から
-まずは、株式会社PLAST設立までの経緯を教えてください。
理学療法士免許取得後に新卒で働き始めたのは、回復期リハビリテーション病棟(以下、回リハ)でした。回リハでは入院期間が決められているため、患者さんが十分にリハビリを受けれないままに退院することが多く、「もっとリハビリできれば良くなるのに…」と悔しい思いをしていました。
そこで、病院勤務しながら、退院後にフォローできるような取り組みを個人事業主としてスタートしました。
-病院勤務で感じた課題を解決することが一番最初のきっかけだったのですね。実際にスタートしてみて、いかがでしたか?
想定していた以上にリハビリを必要としている地域の方々は多いことを実感しましたし、リハビリによって元気になる方が多いことにも気付きました。
その経験のなかで、当時はほとんどなかったリハビリ特化型デイサービスを作る意義を理解し、「プラスト新長田」をスタートさせました。
-一緒に立ち上げた常務取締役の大谷さんは病院時代の上司とお聞きしましたが、どのような経緯だったのでしょうか?
当時にリハ科のトップだった大谷さんを引き抜いた形ですね(笑)。ただ、大谷さんも当時は病院勤務で限界を感じている部分があったようでした。そこに、僕の想いに共感し、僕が一人で立ち上げることに「支えないとあかん」と思ったことが決め手となり、伴走してくれました(笑)。
人との関係から生み出される事業展開
-「プラスト新長田」以降、多くの異なる事業を展開されていますね。それぞれ、どのような経緯があったのでしょうか?
なかなか皆さんにはお伝えできていないのですが、実は全てが「人との関係」のなかで生まれています。
「プラスト新長田」は通所サービスですので、家から出ることが難しい方は利用することができません。そんな方々に支援を届けるため、「プラスト訪問看護ステーション」をはじめました。一方で、「プラスト新長田」の利用者さんから「3時間は長い」と言われることもあり、さらには要支援の方々への予防の観点から関わりを持つ必要性も感じ、一時間型予防特化デイサービスの「リハビリモンスター」をはじめました。
また、「プラスト訪問看護ステーション」に小児を専門とした理学療法士が加入し、小児利用者さんとの関わりを持つようになりました。そこで重度心身障害児に行き場がないことを知り、重症心身障害児のデイサービスである「ヒミツキチ」をはじめました。
-利用者さんの声が事業展開に影響していたのですね。
そうですね。でも、スタッフや地域の人々の繋がりから事業が展開している場合もあります。企業主導型保育園の「ジャングル・ラボ」は子育て世代のスタッフの働きやすい環境を作り出すため、福祉用具貸与の「フィジオデザイン」は地域で事業継続の相談を受けたことがきっかけです。
-「フィジオデザイン」はカフェを併設していますが、これはどのような理由でしょうか?
フィジオデザインはリハビリモンスター神戸の真横に位置しています。運動を終えた人がくつろげる場所として体に良い薬膳茶を飲み、そして福祉用具の相談を気軽にできる…そんなイメージが「PHYSIO DESIGN BASE」にはありました(*コロナ以降「PHYSIO DESIGN BASE」は休業)。
さらに、子どもとの関わりを持つ事業展開をしていることは長田区役所にも認知していただくことになり、区役所内の子育て支援事業である「おやこふらっとひろば」の開所が決まりました。
-その後にチョコレート屋で就労継続支援B型の「久遠チョコレート神戸」をオープンさせていますが、こちらも「人」が関係しているのでしょうか?
「プラストがチョコ屋をはじめた!なんで?」と思われる方も多かったのですが、こちらにも同じような流れがあります。重症心身障害児のデイサービスである「ヒミツキチ」は、0~18歳しか利用することが出来ないために、その後に行き先がなくなるという問題に直面していたのです。そこで「僕たちに何かできることはないか?」と模索した結果、障害のある方が支援を受けながら就労もすることができる形である事業として選びました。
ちなみに、「久遠チョコレート神戸」のサービス管理責任者として働いてくれている藤田さんは、ヒミツキチでのパート勤務を経て転職をしてくれました。スタッフも繋がりのなかから入社してくれる方がいます。常に人に助けてもらっていますね。
会社というチームで「マチ支え」を実践する
-さいごに、株式会社PLASTのこれからの展開を教えて下さい。
2023年9月には、古着屋と複合施設のオープンが決定しています。
古着屋は久遠チョコレート神戸の隣にあるお店を事業譲渡していただくことになっています。ここは「チャリティーショップ」という形態を取っていて、寄付衣類のみを販売しています。これは、日本が世界で一番服の廃棄が多いという環境課題への取り組みで、僕たちもこの取り組みを継続していきます。また、売り上げを様々な支援団体への寄付活動に使っており、その活動も継承していく予定です。もちろん、僕たちの事業ですので、「障害」との関わりも持つ予定となっています。
-また新たな取り組みがはじまるのですね、とても興味深いです。同じ時期にオープンする複合施設とはどのようなものでしょうか?
「ヒミツキチ」を卒業した後に「久遠チョコレート神戸」を利用することが難しい方がいるのですが、その方々が通うことができる「生活介護」という枠組みの事業を行います。現在の重症心身障害児を取り巻く実情は、事業所が少ないこともあり、「ぶつ切りの支援」になるという課題があります。今回の複合施設には「ヒミツキチ」も移転させる予定ですので、卒業後も同じ空間で支援を受けることが可能となります。また、就労継続支援の方々もこの空間を利用し、社内のミーティングや社外の方々も出入りできる環境にする予定ですので、社会との接点も積極的に作っていきます。
-「コモンスペース」のような複合施設になるのですね。
まさにそのイメージです。様々な人に足を運んでもらいたいと思います。
-株式会社PLASTでは「マチ支え」をテーマにしていますが、この複合施設もやはりそのなかに含まれているのでしょうか?
そうですね。僕たちが会社というチームで地域にある医療介護障害福祉に関する課題を解決していくことを「マチ支え」と称しています。僕たちが関わる人たちがマチのなかで行う生活や活躍を事業を通して支えていきたいですね。
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