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シナノキ

【シナノキ】科の木、榀の木、級の木
学名:Tilia japonica
シナノキ科シナノキ属 落葉広葉樹 ※APG体系ではアオイ科
英名:Japanese linden、Japanese Lime
分布:北海道から九州までの山地
別名:アカシナ、シナ、東北地方などの一部ではマダ、マンダなど。

日本固有種(※国立科学博物館の日本固有種リストには他のシナノキ属の記載は有りシナノキはない)

<基本情報>

「Tilia」の語源はギリシャ語「tilos=繊維」の意味(世界大百科より)、「Ptilon=翼」の意味(翼状の苞葉から。新牧野日本植物図鑑より)と諸説あり。

葉は左右非対称のハート型で互生に並び、細長い楕円形の苞が花序につく総苞葉が特徴。花は星型で下向きに咲き、雄しべが花弁より長く出ている。果実の落下の際に一緒に枝から離れプロペラの役目をする。
(実についてはやや甘い粘液があるらしいが可食についての文献等が見つからず)

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<シナノキ属>

北半球温帯に約30種類あるとされ、主な5種を先に記しておく。

●オオバボダイジュ(オオバシナノキ、Tilia maximowicziana Shirasawa)日本原産(北海道、本州中部以北)。別名アオシナ。シナノキとの違いは雄シベが花弁より短く、葉の裏に星状毛(せいじょうもう)と呼ばれる毛がある(シナノキにはない)
●ヘラノキ(箆の木、Tilia kiusiana Makino et Shirasawa)日本原産(本州・奈良県、兵庫県以西、四国、九州)

●セイヨウシナノキ(セイヨウボダイジュ、Tilia ×europaea、ナツボダイジュT.platyphyllos Scop.とフユボダイジュT.cordata Mill.の自然交配種、別名リンデン、リンデンバウムLindenbaum)ヨーロッパ原産。英名や別名common lime、common linden、Lime tree ※なぜ「ライム」なのか調査中。
●アメリカシナノキ(Tilia americana)アメリカ原産、Basswood

●ボダイジュ(Tilia miqueliana Maxim)中国原産。日本では寺院周辺に植えられることが多い。葉の裏には星状毛がある。
※インドボダイジュ(Ficus religiosa)クワ科イチジク属で別種。釈迦が悟りを開いた場所の木は本種。

▼インドボダイジュの葉

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<シナノキ(及びシナノキ属)の利用>

樹皮は強い繊維質で古くは、布を織って衣服等に使用していた。耐水性もあり、船用のロープ、醤油や酒のこし袋などにも利用されていた。

アイヌ語では、ニペシ(ni-pes、木-から-もぎとった裂皮)(アイヌと自然デジタル図鑑より)

木材としては、合板、マッチの軸、アイスクリームのへら、器具材、彫刻材、鉛筆材などに利用される。

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花は蜜源として知られ、北海道では菩提樹ハチミツとして特産品になっている。

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ヨーロッパのセイヨウシナノキは、古くからハーブティとして利用されており、花を苞葉ごと乾燥させたリンデンフラワーと木部のリンデンウッドがある。風邪、咳、発熱や抗炎症作用、高血圧などに良いとされる。

<主なフィトケミカル>

花からは溶剤抽出(アブソリュート)によって精油が抽出される。リンデンブロッサム、ライムブロッサムなどと呼ばれる。

主な香気成分は、ファルネソール、ゲラニオール、ジャスモナール、酢酸ベンジル、シトラールなど(生活の木その他精油製品添付資料より)

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<青森県では>

青森県北津軽郡鶴田町野木の浄林寺には推定樹齢200年以上のシナノキがあるようだ(未見)

八甲田山を見渡させる位置にある「萱野高原」(十和田八幡平国立公園の一部・青森市横内字八重菊)でシナノキが多く見られる。

見出し画像、基本情報の葉と樹皮の写真はここのもので、星状毛は確認できなかった。高原は広くもしかすると種類は混在している可能性もある。

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追記:萱野高原へ向かう途中の、現在はレジャー施設などがある雲谷(もや)地区は、藩政時代に弘前藩が良馬を産出するための牧場を開いた「津軽五牧」の一つであった(石碑がある)。

高原には現在も茶屋が数軒あるが、牧夫の健康のために茶を飲ませていたと伝えられているらしいことと、高原のシナノキは牧場の馬に日陰を作るために植えられたとされるページを発見。(役所か図書館調査になりそうなのでまたどこかの折に調べたい)

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