脱調保護(脱調分離システム)について
前回記事に取り上げた脱調ですが、この現象が起きた際の保護方式について述べていきたいと思います。
電力系統と系統連系した発電機が脱調すると、様々な悪影響が出ますが、これを防ぐためには脱調した電源(発電機)を迅速に解列させる必要があります。解列自体は遮断器が行いますが、検知には専用の装置を使用します。
脱調検知の方式としては、インピーダンス軌跡が組合せ距離リレーの領域を順次一定時間をかけて通過したとき脱調と判定する「インピーダンスロ ーカス方式」、送電線両端間の電圧位相差から脱調を検出する「電圧位相比較方式」の二種類が挙げられます。以下に、簡単に解説していきます。
「インピーダンスローカス方式」は、電流と電圧から電気的に求められるインピーダンスが、脱調の際決まった挙動を示す特性を利用して、脱調を検出する方式です。自端検出・自端分離が特長で広く用いられている方式ですが、ループ系統など系統状況が複雑になると脱調の電気的中心点の検出が難しく、放射状系統に多く用いられます。
一方の「電圧位相比較方式」は線路(または変圧器)の両端電圧の位相差から脱調の電気的中心点が侵入したことを検出し分離する方式です。PCM電流差動方式(電流差動原理を用いた送電線保護システム)を標準的に取り入れている基幹系統では頻繁に用いられています。系統状況に左右されることなく、脱調の電気的中心点を確実に高速に検出できる方式です。
上記二つの方式が脱調分離システムという名称を冠しており、脱調未然防止システムの最終バックアップとして使用されています。
とはいえ、実際に事業者がタービン発電機やディーゼル発電機を購入し、系統連系前提で設置する場合、これらは省略されるケースもあるようです。
どうやら代わりの保護装置を設置することで、この脱調保護問題をクリアしているようので、次回はそれについて述べていきます。
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