ネタバレ鑑賞後に考えるドラゴンクエスト ユア・ストーリーに裏切られない方法と観て傷ついた自分を肯定する方法

2019年8月11日、日曜。観賞後そのままの勢いで書いた。

公開初日以降ひどい感想が飛び交った本作を、隙間の時間を使って鑑賞した。流されて具体的に描かれるドラゴンクエストを観てしまうことを恐れ、将来観る事はないだろうとスルーする予定だったのに。

本題の前に僕とドラクエに関する履歴を少し。

僕がファミコンが誕生した83年に生まれた僕が初めて遊んだドラクエはIV。ファミコン全盛の後期でようやく手にできたドラクエシリーズだ。その後、III、SFC I・II、VIと中学時代にプレイし、Vは周りの評価を聞きつつもずいぶん後でプレイしたように記憶している。ちなみにその後社会人になり、IXクリア。Xは途中で挫折。VIIIはスマホでプレイも挫折。最近はドラクエについてガッカリすることも多く、IPの育て方って大変だなあと思っている。

そんな状態で、しかもラストのネタバレをくらってしまって臨んだ本作。
CGは良かった。物語はひどい。と怒る評価。
酷評わかります。それでも何か評価できることはないのか。
どうすれば良かったのかという点について書きたい。

このためにはネタバレが必要なので、ここからは承知できた方のみお読みください。

- § -

素直に感情移入できて良いシーンだったのは結婚のくだり。ビアンカの揺れ動く感情とそのCG表現だった。主人公の残酷な言動は罪。社会に観られるシーンとして責任がないと断罪したい。フローラのフォローアップがあってまとまりの良いパートになっていたが、傷つくよなあ。真似しないでください。傷つけた代償が物語に描かれていないので、ここは怒るポイント。
ただ、ビアンカのことを想い、涙しました。良かったね、ビアンカ。

観賞後振り返って、良かったなーと思ったのはここまで。総じて単調な脚本でした。Vのストーリーを全て伝えようとしすぎで中途半端な省略をしてしまったのだと思う。

残したかったメッセージは良いはず。

本作のメッセージは、僕たち鑑賞者(社会に接続された僕たち)も勇者のロールプレイを通して、勇者に近しくなっているという肯定です。勇者たる行動をもう僕たちはできるのだと。
ドラクエを繰り返し遊んだ。シリーズをいくつも遊んだ。その経験値はゲームの中だけに止まらず、自分の経験値になり、社会へ還元できる価値になっている。

Vベースの決定かメッセージの決定のどちらが先かは知る由もないが、Vのストーリーをベースにしたのはこのメッセージを伝えやすいと判断したのだと思う。Vの主人公は勇者ではないから。プレイヤーも社会の中では勇者という職業ではない。

だから、勇者でない主人公(リュカ)がメッセージを残せるように、最後のウィルスと退治させたのだ。

どうして最後までこの設定を隠してしまったんだろう。変な伏線だけあっても、鑑賞者には裏切られた気持ちになったはずだ。そしてメタっぽい表現の中で発せられる「大人になれ」という言葉。どうして物語に説教させる構造にするのか。

僕の思う致命傷は以下の点。

・フローラを傷つけたままにした
・メタ設定が唐突
・大人になれが鑑賞者に対して攻撃的すぎ(悪意とも思える)

もう少し優しくしてくれてもいいのに。と思うのは僕だけでしょうか。

じゃあどうすればよかったのか。
脚本の冒頭にこのメタ設定を見せてみよう。

2XXX年、時代と共にゲームテクノロジーも進化した。
とうとうドラクエはVRによる没入体験が可能になった。
会社での些細な出来事に納得がいかない。
どこか子供っぽさを残す主人公サラリーマンA。
今ならフローラを選びたいな。そう思った主人公は
帰路の途中でレジャー施設でドラクエの世界へダイブする。
(現実パートからゲームパートへ)

こうすれば僕の思う致命傷を解決できると思う。

・フローラとビアンカの選択を心の成長に接続させれる
・ウィルスの侵入を暗示する伏線も入れれる
・大人になれという言葉を鑑賞者に直接向けずに物語の中で納めれる

ウィルスと対峙した時、主人公は当時を回想します。プレイしていた時の達成感と共に、VRの世界の中で見てきた勇しく闘う登場人物たちを。僕たちが家庭用ゲーム機でプレイしていた時も登場人物たちは勇しく戦っていたのです。ワクチンを渡され、ゲームと現実の狭間でも主人公が何をすべきかは自明でした。

- § -

僕たちはドラクエの世界が美しいCGで描かれたことを評価しています。

でも、このドラクエの世界ってすでに知っていたはずじゃありませんか?
ビットの世界から僕たちは本作のような世界を想像して楽しんでいました。本作で肯定できるところは少ないですが、本作を通じてこれまで培った想像力を肯定しませんか。有事の時に勇気ある行動をとることができる。そういう経験値をこれからも蓄積していきたいものですね。

フローラを選んだ時点で現実パートに戻って、日付を変えて会社での出来事のエピソードも織り込んでもいいかもしれない。とか考えたりすると楽しいです。僕は生憎やくそうも持ち合わせておらず、ホイミも使えませんが、皆さんもどうすれば良くなったのかという想像を膨ませ、傷ついた心が少しでも癒されることを願っています。


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