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医療職のための統計学基礎講座

 この記事は、済生会兵庫県病院様で開講している同名の講座の参加者様用のものですが、一般公開にしております。ご留意ください。

濟生 No.1120 2022年10月で当講座が紹介されました。


はじめに

 「最強の学問」と言われる統計学。自然科学、社会科学、ビジネスとあらゆる分野で、確実かつ説得力のある根拠を得るための手段として活用されています。医療分野では、介入の有効性の判定に使われています。

 この統計学、教科書、関連書籍、ウェブサイト、動画等が数多く出回っており、独学も不可能ではありません。
ただ、実際に独学するとなると、まずは聞き慣れない専門用語を理解することと、最低限の数学知識が必要であることが壁となって立ちはだかります。

 確かに「数式を使わない」ことを売りにする解説書も結構あります。完全に定型的作業で良しとするならばそれも否定しませんし、そもそも統計学で用いられる数学を全て理解するのは一般の大学生でも困難です。しかし、統計処理をやっていて「この計算は何を意味するのか」「どうしてこうなるのか」「この方法で正しいのか」「解釈はこれでいいのか」を判断するには、どうしても数学知識が必要になりますし、これが曖昧なままでは、単に腑に落ちないだけでなく、間違った結論を導く危険を抱えたままになってしまいます。

 今回の講座開設に当たり、受講者である医療職の負担と修得効率との均衡を考慮し、必要最小限の数学的解説で「腑に落ちる」方法を模索しました。
結果、線形代数(空間ベクトル)の基礎を併用する教授法が適切であると判断し、教材開発を行うに至りました。
 線形代数と統計学は非常に相性が良く、何より難解な数式が視覚化され、一見無味乾燥な数式が感覚的に把握できるようになります。
 因みに、これを全面に採用した統計学の教材は、高等数学を扱う特定の教育系YouTubeチャンネル、それもごく一部のコンテンツ以外に発見することはできませんでした。

この講座で得られるもの

基礎講座の最終目標を次の二つに設定します。

  • (重)回帰分析の理解

  • (介入)前後比較試験の検定(t検定)

教授方針

 今回の基礎講座では、統計学の幹となる本質的な部分が受講者の腑に落ちることを主眼とした授業設計とします。

 限られた時間で最大の効果を発揮するため、講義を聞いてメモを取るような単なる座学ではなく、簡単な数値を用いて実際に手元で計算を行うなど、受講者参加型の授業を基本とします。

 講義内容は後日noteにまとめて限定公開し、反復学習できるよう配慮します。また、疑問・質問もコメント欄等で可能なように参加者に通知します。

 なお、今回の講座は、目標に掲げた2本の幹を通すことを優先しており、分散分析等の必須統計分野や、オープンソースの統計ソフトである"R"の使い方など、重要な項目が網羅されていない旨ご了承ください。これらについては、要望を勘案しつつ検討していきたいと思います。

ご用意いただくもの

  • 会場側:プロジェクタ、スクリーン、ホワイトボードを備えた講義室、インターネットにWiFiで接続可能な環境

  • 受講者:メモ、筆記用具、電卓(携帯)

開講予定

講義内容は、全9回となります。
2022年度は、毎月第4月曜日(診療部)・毎月第2月曜日(事務部)、時間は17:15~18:45を予定しています(各9回、計18回)。祝日の場合は翌日火曜日となります。
以下の講座内容は全て仮題(予定)です。講座の進捗を見て変更します。
前の日付が診療部、次の日付が事務部対象です。

令和4年(2022年)

(01) 7/25, 8/8 サイコロで遊んでみよう

(記述統計:平均、分散、標準偏差、大数の法則、ヒストグラム、箱髭図)
当日配布資料(作業用)

黒板使えました
講座会場

(02) 8/22, 9/12 直角三角形と分散の正体

(三平方の定理、ベクトル)

(03) 9/26, 10/11(火) データ・平均・分散は直角三角形

(ベクトルの長さ、内積、正射影、共分散、相関係数)

(04) 10/24, 11/14 気合いでデータをシミュレート1

(回帰分析、最小二乗法の解析学的手法)  

(05)11/28, 12/12 気合いでデータをシミュレート2

(回帰分析のベクトル表示、実際の計算)

(06) 12/26, 2023/1/10(火) n-1で割る謎

(推測統計概論、標本検定、自由度、不偏分散のn-1問題)

令和5年(2023年)

(07) 1/23, 2/13 世界はサイコロかも知れない

(正規分布、二項分布、t分布等統計確率分布の概説)

(08) 2/27, 3/13レアなことは偶然起こらない

(仮説検定の考え方)

(09) 3/27, 4/10介入に効果はあったのか?

(前後比較試験での対応のあるt検定)

質問等

受講者様

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 少々お時間をいただきますが、可能な限りお答えします。

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