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PLANETS CLUB ESSAY

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2020年5月の記事一覧

遠回りのオタク

 2017年11月8日、東京ドーム。暗闇に包まれる中、開演を告げる「Overture」が流れると、一斉にサイリウムが七色に光り始め、5万人のオタク達の野太い声が地鳴りのように会場一面に響き渡る。「Overture」が鳴り止むと、1曲目のイントロが流れ、火薬の爆音と共に制服を身に纏ったメンバーが登場すると、サイリウムを振り続ける5万人と共に僕のボルテージは最高潮に達した。「制服のマネキン」は乃木坂46の楽曲で僕が1番好きな作品だ。乃木坂46は生みの親である秋元康が「リセエンヌ」

運転⇔走る 拡張される身体

この4月から始めたことが二つある。新入社員向けの安全運転教育と、趣味としてのランニングだ。一見すると全く関連のないこの二つの事柄が、僕の中で何とも不思議に結びつきつつある。 レース専用車両を設計、開発、制作するのが僕の職場の主たる事業だ。モータースポーツに関わる技術者として、一般の人よりも運転をはじめとしたクルマとの関わり方については一段高いレベルであることが望ましい。僕は過去にとある自動車メーカに出向していて、「性能の80%以上を安全に引き出しクルマを正しく評価できる運転

頭上の花は自分じゃ見えない

今から12年前のことである。 高校最後の春休み、私は地味でパッとしない自分の見た目をガラッと変えてみることにした。人生で一度でいいから、「リア充」というものになってみたかったのだ。真っ黒だったショートヘアを明るく染め、エクステとかいう長い付け毛を装着し、顔面には不慣れなメイクを施した。そんな「リア充のコスプレ」は思いのほか効果があり、大学入学と同時に始めたアルバイト先で1つ年上の男性からメールアドレスを聞かれ、トントン拍子でお付き合いすることになった。彼、Dくんは本物のリア充