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氷の化石と、言葉の花火


胸元に光るのは、透明な「お守り」だ。


青い糸に包まれた透明な石は、家族で見に来た花火の光を綺麗に映しこむ。

こうやって、この「お守り」は私と共に小さな時間を共に刻んでゆくんだろう。

忙しいけど、ゆっくりとした日常を。

淡いけれど、色鮮やかな日常を。


この世界は、目まぐるしく動く。

時に痛みを与えながら。時に喜びを与えながら。時に苦しみを与えながら。

我が家の中に流れる時間は、それとは違う忙しさ。

目をぱちくりさせたくなるジェットコースターみたいに、賑やかで楽しく、愛おしい時間の流れ。


それを、私は言葉にしたい。


この世に二度とは現れない、けれど毎日繰り返される奇跡の瞬間を。

絶え間ない、けど再び経験できない想い出を。


あの時、流した涙達。忘却できない、私が私である原風景を。


あの日の傷は、まだ引き連れるように痛む時があるけれど。

あの日、君がくれた優しさが、未だにじんわりと傷を覆うけれど。


今、胸元で揺れる「氷の化石」が、全部受け止めて、いつか美しい「記憶の化石」になる。

きっと、そうなってくれると、信じている。

・ ・ ・

私は、「お守り」を掌に持つ。

子供たちが寝静まった、静謐な青い夜に。

それは一人の女性が創り出した、小さな掌に乗る奇跡で出来た、世界でたった一つの「お守り」

この「お守り」は、いつか私の言葉になる、本の世界を守ってくれるだろう。

・ ・ ・


私の原風景は、いつか言葉で綻んでゆく。

糸になる前の繭のように、今はまだ、形を保ったままだけれど。

それでも、あの風景はいつか糸になる。

青い二つの「お守り」に見守られ、花火のように色鮮やかに輝く糸となって、これから生まれてくる別の世界を編み上げる。

私の過去の痛みと幸福を、七色の言葉で、誰かの真っ暗な空に打ち上げよう。


ーーーそれはきっと、華々しく広がる花火のように、誰かの心を照らし出す。





はるさんに贈る物語



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