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宇宙から見た地球を想った ~皆既月食 と Pale Blue Dot~ 【見上げた星空の記録🌃】

皆既月食のさなかにみられた、天王星食。

月食の延長 というくらいの気持ちで、とくべつ期待をせずに迎えたけれど、月の向こうに隠れゆく天王星の姿を目の当たりにして、思わずハッとした。

これ、はるか彼方からみた地球の姿にそっくりなんじゃないか、と。


Credit: NASA/JPL-Caltech.

Pale Blue Dot

いまから、もう30年以上前のこととなる、1990年。
惑星探査機ボイジャー1号は、およそ60億キロ彼方から、こちらを振り返って太陽系の惑星たちの写真を撮り、わたしたちに届けてくれた。

Family Portrait ~太陽系の家族写真~  (ボイジャー1号撮影/1990年)
Credit: NASA/JPL-Caltech

おそらく、人類史上もっとも遠くから撮影した地球。
そして、地球以外の惑星たちも撮影し、それをひと繋がりに並べたモザイク写真も公開された。

太陽系の家族(太陽と惑星たち)が勢ぞろいした、ファミリー・ポートレイト。

消え入りそうな、青い星の姿

この一連のモザイク写真のなかに、Pale Blue Dot とされる、とくに有名な1枚も含まれている。

Pale Blue Dot Credit: NASA/JPL-Caltech

○印 で示されているところに、1ピクセルにも満たない、かすかな青い点が見えている。

これが、ボイジャー1号からみた、わたしたちの地球の姿。

ほとんど見えないほどの小さな青いドットだけど、、わたしたちが知っているすべての地球の歴史が、すべてここに詰まっている。


皆既月食の月の向こうで

ボイジャーのファミリー・ポートレイトから30年余り。

2022年11月8日、日本では多くの人が夜空を見上げて、皆既月食の月と向かい合っていた。

その傍ら、肉眼では見えないほどの暗い光も捉える望遠鏡が、月食中の月の向こうに隠されてゆく、青い天体の姿を捉えていた。

およそ30億kmかなたの、太陽系第7惑星「天王星」。

ガスと氷からなる、地球とはまるで違った姿の惑星。
でも、メタンなどの大気が、のっぺりとした青緑色の表面を作り出し、どこか地球にも似たような色合いをしている。

天王星までの距離は、およそ30億キロ。
そうか、ボイジャーは30年以上も前に、この日のわたしたちがみた天王星よりも倍以上遠いところから、地球の姿をとらえていたんだ。

38万キロ先の月と、30億キロ先の天王星。

なかなか想像が追いつかない距離感だけど、わたし自身、自分の手で望遠鏡を向けて、これらの天体の奥行きに思いを馳せることができた。

そしてまた、ボイジャーがみた地球の姿は、ボイジャーの目にどんなふうに映ったのか、ボイジャーの気持ちにもおもわず感情移入してしまいそうな、そんな気持ちになった。

千載一遇の大チャンス

今回の皆既月食&天王星食は、端的に言うと、

望遠鏡で天王星をしっかりと見ることができる、きわめて貴重な機会だった

といえる。

これ以上無い目印

天王星の明るさは、約6等級。
これはつまり、とびきり星空がきれいな場所で見上げても、肉眼で見えるかどうか限界の明るさ、ということ。

6等級以上の明るさの星は全天でおよそ6,000個。
だから、たとえ望遠鏡の視野の中に天王星があったとしても、無数の星々の中でどれが天王星なのか見分けるのはかなりムズカシい。

それが今回は、月に隠されるということで、この上ない目印のお陰で天王星探しがやりやすい状況が実現していたのだ。

満月よりも やさしい月

さらには、、天王星食が起こるときだったらいつでも天王星を見つけやすいか、というと、それがそうでもない。

皆既月食の月は、太陽の光が直接はあたっていないわけだから、ふだんの満月なんかよりも、はるかに暗い。これも、ものすごく好都合だった。

つまり、月が目印になってくれるけれど、その月のまぶしさで天王星の微かな光が見づらくなる心配がほとんどない、なんとも理想的な状況であった、ということ。

皆既食の月も、すごく暗くなってきれいだったけれど、それ以上に天王星の姿をこんなにしっかりと捉えることができたことが本当に印象的で、そしてまた、なんだかとても嬉しかった。

月食中の月の影から出てきた 天王星 2022/11/8

宇宙の実感

ふとしたきっかけで、宇宙の大きさを感じたり、地球が宇宙に浮かぶ一つの天体であることを実感する瞬間、がある。
急にガツンと宇宙の存在感というか、リアリティを体中で実感するような、そんな感覚といえるだろうか。

今回の天王星食も、そういう体験の1つとなった。

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