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FUTON
"女たち。このわけのわからない、しかしいとおしく、人生を華やかにしてくれる美しい生き物たちは、その甘やかで柔らかい表情や仕草の裏で、何か途方もなく懸命に生きているらしいのだ。"2003年発刊の本書は著者デビュー作にして、田山花袋『蒲団』へのオマージュ溢れる一冊。
個人的には『蒲団』。田山花袋、そして日本の自然主義文学の代表作を下敷きにした作品がある事を知って、興味を感じて手にとりました。
さて、そんな本書は『蒲団』作中の時雄と芳子と田中の三角関係を自然と思い出させるかのように。田山花袋研究者のディブ、その愛人となる日系女子大生のエミ、エミのボーイフレンドのユウキが配置されている些か【複雑な三角関係】を軸に様々な人物たちが登場しながら物語が進んでいく一方で、合間にディブが『蒲団の打ち直し』と、まさかの『蒲団』の時雄の『妻側から見た小説』が【テキストとして独立して挟まれている】のですが。
まずはやはり『蒲団』ラストの蒲団くんかくんかから人によっては【匂いフェチのキモ中年小説】とも『誤解されている』作品の魅力をディブの研究者としての学会での発表や『蒲団の打ち直し』といった小説で代弁させるかのように文学史上の意義も含めて大いに語らせている点に好感を覚えました。
一方で、ディブが『まるでサンドバッグになったかのように、ディブは女たちからボコボコと本音をぶちまけられた』と作中で述べているように、幾重にも複雑な三角関係が展開する中で、すべての【登場人物女性の声を聞く唯一の男性】となるディブ。『現代の竹中時雄』と著者に生み出された人物には『蒲団』発表から100年以上が過ぎて、変化した【現代社会における男性の立場】が描かれている気がして、同じく男性の1人として複雑な心境になりました。
田山花袋『蒲団』既読な方、好きな人にオススメ。また著者のデビュー作として興味ある人にもオススメ。
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