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みんなの民俗学 ヴァナキュラーってなんだ?

"自らが『主流』『中心』の立場にあると信じ、自分達の論理を普遍的だとして押しつけてくるものに対し、それとは異なる位相から、それらを相対化したり、超克したりする知見を生み出そうとするところに、民俗学の最大の特徴があるのだ"2020年発刊、本書は現代民俗学"ヴァナキュラー"をわかりやすく紹介した良書。

個人的には主宰するメタバース読書会『cluster読書会』で参加者に紹介されて興味を持って手にとりました。

さて、そんな本書は現代民俗学、民俗学理論の研究者として、2022年現在、関西学院大学教授、世界民俗学研究センター長をつとめる著者が"日本では民俗学というと、農村漁村に古くから伝わる民間伝承(妖怪、昔話、伝説、祭りなど)を研究する学問だと思われている場合も少なくないようだが、現代の民俗学はそのようなものではない"と、2000年代に入り、それまでの『フォークロア』に代わり【最重要ワードになっている『ヴァナキュラー』を説明した上で】身近な例としてキャンパスの七不思議や、労働者や各家庭にのみ伝わるルール、喫茶店のモーニングやB級グルメなどを紹介してくれているわけですが。

本書冒頭で書かれている通り、民俗学といえば『田舎の風習を調べるだけ』と、不勉強な先入観をもっていた私にとって、本書でわかりやすく説明してくれる【合理性や普遍性に重きをおく啓蒙主義】に対する、いわば覇権、普遍、主流、中心主義に対する【カウンターカルチャー、学問としての民俗学】という捉え方は非常に刺激的でした。

また、著者が関西圏の大学で教えていることもあり、本書で紹介される【事例の多くが西日本、大阪である】ことから。同じく縁のある私にとっては『探偵ナイトスクープ』や『よく遅延する阪和線』といった事例が出てくる都度に思わず笑ってしまったりと楽しかった。

現代民俗学の入門書、合理性や普遍性の強要にストレスを感じる方。あるいは日常に対する眼差しを豊かにしたい方にオススメ。

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