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流浪の月

"わたしたちの間には、言葉にできるようなわかりやすいつながりはなく、なににも守られておらず、それぞれひとりで、けれどそれが互いをとても近く感じさせている。わたしは、これを、なんと呼べばいいのかわからない"2019年発刊の本書は、2人の姿を通じて【普通とは何か?】を揺さぶってくる2020年本屋大賞受賞作。

個人的には、こちらも関わらせていただいている【読書による文学賞】の推薦図書として手にとらせていただきました。

さて、そんな本書は一つの"事件"の当事者である少女と大学生の"普通"とは違う特殊な2人の関係性を、それぞれの成長や変化を交えながら描いているのですが。日々起きる出来事に【わかりやすいレッテルを貼っては】決して当事者達の声には耳を傾けずに、一方では、さも当然の様な正義面をして【理解したふるまいをしがちな】現在のネットやSNSにより増幅し拡散される【無意識な悪意】を痛切に明らかにしているように感じました。(少なくとも私には強く刺さりました)

また、私自身の事で恐縮ですが。結局は【他者からの承認されることを意識して】普通と言われる事を嫌悪し【特別で在りたいと】どこかで願っていた不安で仕方がなかった過去をへて。今現在ようやく、そういった【どうでもいい事】から解放された静かな心境になっている私にとって、本書の2人のセリフや行動はどこか懐かしくも痛い過去と向き合わされる様な没入感も与えてくれました。

感情を揺さぶる小説を探す誰か、マイノリティさに苦しむ誰かにオススメ。

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