見出し画像

幕末暗殺剣

"『下手人を割り出して斬り倒せ。あの豪勇の龍馬を殺った手だれの刺客に立ち向かえるのはお前しかいない』(中略)『はいッ』総司は、晴明な笑顔でこっくりとうなずいた"2009年発刊の本書は、まさかの沖田総司が探偵役として龍馬暗殺犯を探るエンタメ時代小説。

個人的な話で恐縮ですが。新選組の屯所あたりに住んでいることもあって、勝手な親近感を覚えていることから本書を手にとりました。

さて、そんな本書はかっては『探偵 沖田総司』として刊行されたのを改題したらしいのですが。そして幕末人気キャラクターでも上位にあげられるだろう坂本龍馬と沖田総司が新たにサブタイトルにつけられているものの、残念ながら『史実通り』両者は【直接絡むことはあまりなく】もっぱら沖田総司(と新選組)が神社の姫巫女をパートナーにして、龍馬殺しの真犯人を追っていく展開になっているのですが。

まあ、こういったエンタメ時代小説は資料に基づいた時代考証(事実)と、隙間を膨らますかのようなフィクション(if)の【バランスが肝ではないか】と思われるのですが。本書はまず、歴史好きでもおそらく納得するであろう新選組の興亡を軸にした【幕末から明治にかけての時代の変化】を史実や風俗ネタを散りばめながら割と正確に書いていてる印象で(自分にとっては前述の通り"ご近所ネタ"でもあるので)違和感なく楽しむことができました。

一方で、確かに(こちらも史実通りに)沖田総司は肺病におかされつつも暗殺者としてタイトルの『幕末暗殺剣』として純粋に剣をふるいつつ。本書内で総司本人がセリフとして発言しているように【探偵役としてもっともふさわしくない】役も並行してつとめていた。との【フィクション部分の展開に関しても割と新鮮で】また、そのバランスを無理なく成立させるためでしょうか。京女の巫女さんがもっぱらホームズ役として導いていくのも楽しかったのですが。ラストがスッキリしないのが、何とも歴史ファンとしては必然。だけどエンタメを望んでいた立場からは残念でした。

とにかく沖田総司、新選組が好きな人にオススメ。薩長ファンにはオススメしません(笑)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?