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論理哲学論考

"本書が全体としてもつ意義は、おおむね次のように要約されよう。およそ語られうることは明晰に語られうる。そして、論じえないことについては、人は沈黙せねばならない。"1918年発刊の本書は、著者が生前発刊した唯一の哲学書にして『人間にとって言語とは何か』を独創的に考察した刺激的な名著。

個人的には拗らせポエマーだった学生時代に、さっぱり【わからないままにカッコいい!】と鞄にしのばせていた本書。もう少しちゃんと向きあってみようと久しぶりに再読しました。

さて、そんな本書ですが。冒頭の【わかる人だけわかればいい】的な始まりを懐かしく思いつつ、箇条書き的な命題の羅列、数式、図形で構成されている本書はやはり難解。ただし、著者が【哲学で扱うべき領域】を言葉と世界の対応関係に着目して、真摯に整理整頓しようとしている迫力にはやはり圧倒されます。

また、その上で『世界と生はひとつである。私は私の世界である』と【対象の経験が私の世界を限界づけている】と唯我論的な境地にいたりつつも、それでも!と更に思考を進めていった結果【直接に検証できない事態については語ることできない】(=語りえないものについては、沈黙しなければならない)と余韻を残して終わる本書。哲学書といったジャンルや時代を越えた文書的な魅力があります。

あと、コンピュータやAIといった分野への影響はよく言及されますが、再読して。著者の言葉の反復可能性への注目は最近だと【これってブロックチェーン技術では?】と感じて独り興奮したり。

哲学好きはもちろん、言葉の可能性と限界を考えたいポエマーな誰か、AIやIT業界に関わろうとしている人にもオススメ。

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