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殺戮にいたる病

"そんな時、彼は決まって途方に暮れた。自分が何をするべきなのか、まるで見当がつかなかった。それが何か分かったのは、最初の殺人を犯してからだった。"1992年発刊の本書は、東京の繁華街で次々と猟奇的殺人を重ねるサイコ・キラーを描いた叙述ミステリ傑作。

個人的には、最近ミステリにはまりつつある事から、まわりで軒並み評価の高い本書も手にとりました。

さて、そんな本書は冒頭のエピローグで猟奇的殺人の犯人"蒲生稔"が逮捕される。という驚きの場面から始まり、蒲生稔、息子が犯罪者と疑いだす蒲生雅子、そして事件に巻き込まれていく引退した元刑事の樋口の【3人の語り手によって過去に遡って事件が語られていく】のですが。

最初に感じたのは、バブル時代ど真ん中の1989年に起きた東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件を連想させるかのような、死体を凌辱し、遺体の一部を切り取っては自身の性的満足の為に持ち帰る犯人"蒲生稔"の【異常性への嫌悪感でしょうか】率直にいって描写も含めてかなり人を選ぶのではないかと思いました。

一方で、このままあっさり終わるのか?と思っていたら、ラスト数ページで作者に第一章の始まりの文章"蒲生雅子が、自分の息子が犯罪者なのではないかと疑い始めたのは"から既にミスリードされていた事に気づき"ああ!やられた!"と驚かされ、真相がわかった上でもう一度読み直すと【随所に何度も叙述トリックがしかけられていた】のに気づき感心してしまいました。

猟奇的な描写が大丈夫なミステリ好きな方へ。また『十番館の殺人』や『ハサミ男』叙述トリックの傑作小説が好きな方にもオススメ。


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