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人間不平等起源論

"人と人との差異が、自然の状態においては社会の状態よりもいかに少ないものであるか、また自然の不平等が人類においては制度の不平等によっていかに増大せざるをえないかが理解されるであろう。"1775年発表の本書は【人間社会における不平等の起源】を仮説をもとに大胆に考察し『世紀の奇書』とも評された社会契約論に繋がる一冊。

個人的には『一般意志』といった言葉や、出版禁止などの弾圧を受けた事で知られる『社会契約論』を手にする前段階として本書を手にとりました。

さて、そんな本書は懸賞論文への解答として書かれたもので。動物的な段階からではなく、あくまで【当時の人間像にもとづき自由に仮説を展開し】不平等の進歩を'法律と所有権の設立が第1期、為政者の職の設定が第2期で、最後の第3期は合法的な権力から専制的権利への変化を見いだすであろう"と。いわゆる誰もが平等であった自然状態を好意的に描くも、そこから文明化していく過程で【不平等が合法化、強者と弱者の関係が固定化】されていき【専制政治により不平等は遂に頂点に達した】と考察しているわけですが。まず当時の絶対王政期をフランス王国に仕える一人の立場として、著者がこの本を執筆したことにはやはり驚かされる。

また、人間の自然状態を特に前半において、動物や未文明化社会などと比較して熱く(ちょっとクドイ?)語っているのですが。ヴォルテールからの手紙で冷静に指摘されている様に、論考としての無根拠さはさておき。時代を超えて伝わってくる熱量には読み物として圧倒されるものがありました。

不平等や貧富の発生について。昔の人間はどう考えていたかを改めて知りたい人、また社会契約論に繋がる前提的一冊としてオススメ。

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