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転生!太宰治

"お道化。人間の生活というものがわからない私にできる、唯一の処世術。意識するよりも先に、我が身にしみついたお道化が、ひょいと口から飛び出したのです。私のかなしい、武器でした。"2018年発刊の本書は先行作品のオマージュ作品も多い著者による、まさかの太宰治。現代転生本。

個人的には、太宰治『桜桃忌』持ち寄り読書会を主宰した際に参加者の方にオススメされて、著者の本は初めて手にとりました。

さて、そんな本書はミステリでデビューするも、多彩な分野を横断。近年では純文学をメインフィールドにしている著者が、玉川上水で心中した直後の太宰治を【2017年の東京に転生させて】ヨドバシカメラで文豪ストレイドッグスを観せたり、ライトノベルやメイドカフェを体験させては、太宰ファン好きなら思わず爆笑させられる有名エピソード、雑ネタを挟みながら、さも【太宰治なら書きそう】な見事に寄せた一人称文体でサクサクと展開していくのですが。

まず、転生ものお約束的な【転生前後の時代を比較させながら語らせる】冒頭からの導入部分。本書では太宰治の生きた『第二次大戦から戦後にかけて』の時代を背景に『現在の出版事情やポップカルチャー』をギャップ的に語らせる部分に関しては、やけに太宰治が【前向きに転生を受け止めたり、饒舌すぎる】部分には不自然さも覚えつつも、単純にゲラゲラと楽しませていただきました。

一方で、最初から最後まで太宰治エピソード、文壇ネタ披露だと流石に単調かな?と思い始めた中盤以降、まさかの現代の芥川賞の受賞パーティーで演説、つまみ出されてから【ある地下アイドルを能動的にサポートし始める】後半の展開は、ページ数からも【俺たちの戦いはこれからだ!】的、少年誌打ち切りエンド的な場面までしかたどり着けないものの、続編が"もしでたら"読んでみたくなりました。(無理か。。あ!出てますね!)

なろう系小説が好きな人、またアニメや漫画をキッカケに太宰治好きになった人にもオススメ。

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