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禅と日本文化

"言葉は科学と哲学には要るが、禅の場合には妨げとなる。なぜであるか。言葉は代表するものであって、実体そのものではない、実体こそ、禅において最も高く評価されるものなのである。"1940年邦訳の本書は禅を世界に広く知らしめた英語講演をもとにした古典的名著。

個人的には主宰する読書会の課題本として手にとりました。

さて、そんな本書は『近代日本最大の仏教学者』また『善の研究』でも知られる西田幾多郎の友人、ノーベル平和賞候補に挙がっていたことでもと知られる著者が1935、1936年の二年間にわたって、欧米の大学で行った講演を骨子にした英文著作に、別に『禅と俳句』という一章を新たに加えて和訳発表されたもので、美術、武士・剣道、儒教、茶道、俳句といった(日本文化に禅が与えた深い影響】について、本来なら『実践重視、不立文学』である禅を、しかし【丁寧にわかりやすく言語化】してくれているわけですが。

まあ、専門的な解説は他の方にお任せし、あくまで感想主体で全体結論から書くと、とても面白かった!

とくに別に美術史講座も行っている身としては、以前から室町時代に禅、そして茶道他の今で言う【日本伝統文化が始まった】と語りつつも、それが【なぜ、どうして始まったのか?】といった歴史的背景に詳しく触れてくれていたり、また日本的美意識"わび・さび"についての解説も見事で、自分の中の【美術史理解が深まりました】

また、読書会内で課題作品と共に【アメリカ文学の流れ】などの解説もしているわけですが。本書のもとになった大学講演を聴講生として聴いたことの影響が『ライ麦畑でつかまえて』のサリンジャーの『フラニーとズーイ』にあらわれていて、村上春樹訳だと明確に【作中に『鈴木博士(鈴木大拙)』と記述されている】ことや、『オン・ザ・ロード』ジャック・ケルアック他の第二次世界大戦後のアメリカでの社会運動および文学運動【『ビート・ジェネレーション』にも影響を与えた】ことを知って【文学史についてもスキマ理解が進んだような知的興奮】を覚えました。

禅に関心ある方はもちろん、日本文化や美意識をより深く理解したい方にもオススメ。

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