見出し画像

物語 ウクライナの歴史

"ウクライナが独立を維持して安定することは、ヨーロッパ、ひいては世界の平和にとり重要である。これはアメリカや主要国の認識であるが、中・東欧の諸国にとってはまさに死活の問題である"2002年発刊の本書は『土地をめぐる視点』で元外務省の著者が潜在力と地政学的重要性を指摘した良書。

個人的には、日本在住のウクライナの方々とお話する機会があった時に、自分の勉強不足を痛感したことから本書を手にとりました。

さて、そんな本書は1996年に駐ウクライナ大使に任命された著者が、自身が滞在を通じてウクライナを『発見』(=理解を深めた)したように【日本においてもウクライナが『発見』されるべきだ】と考えて、また民族史というよりは【土地を巡る争いという観点から書いていて】したがって、ウクライナ民族には入らないが、土地に勃興したペルシア軍も撃退した勇猛な騎馬民族、芸術的にも素晴らしいスキタイの歴史から始まり、中世ヨーロッパで栄えたキエフ・ルーシ公国時代『リトアニア・ポーランド支配下』出自を問わない名高い自治的武装集団『コサック』(自由の民)の活躍と挫折『ロシア・オーストリア両帝国支配下』独立運動の失敗『ソ連への編入、弾圧』を経て、1991年の独立宣言による(棚ぼた的な)独立まで【古代から20世紀までが約260ページにて】丁寧にして平易なテキストでまとめられているのですが。

まず、肥沃な大地を領するも(辺境の島国、日本と違い)西欧社会とロシア、アジアを結ぶ通路にあたることから『決定的に重要な地域のナンバーワン』(ブノウ・メシャン)として【歴史上を通じて多くの勢力に狙われてきた】その流れとして【2022年現在状況があること】が、歴史ダイジェスト的に駆け抜ける本書からも充分に伝わってきて理解が進みました。

また、前述のウクライナの方々と話した時に日本の魅力について(漫画やアニメを通じて感じた)【自国と全く違うエキゾチックさ】と共に、一方で『サムライは勇気、名誉、潔さといった点でコサックに似ている』と親近感を感じる。と聞きましたが、本書を読んで、フメリニツキー、マゼッパといった銅像や紙幣に名前を残す英雄たちのエピソードは、日本の武将だったら誰にあたるだろうか?と考えたり。

俯瞰的な視点、スケールでウクライナを理解したい方へ。また物語としてウクライナを知る、最初の一冊としてオススメ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?