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京都烏丸御池の名探偵

"人間の脳のメカニズムは、悲しみを忘れさせる厄介な構造になっているらしい。だから僕はそんな人間の脳のメカニズムに抗う。"2021年発刊の本書は『このミス』受賞作家が京都の四季の移り変わりを背景に描く、僕と彼女の日常系ミステリ。

個人的には『京都』『フリーペーパー』という自分に共通するキーワードに惹かれて手にとりました。

さて、そんな本書は京都のフリーペーパー『miimii』誌のライターとして、読者から送られてくる京都の不思議な出来事をまるで名探偵のように解き明かす『京都烏丸御池の名探偵』という連載を持つ、過去の出来事で心に傷を負った神堂明のもとに、ずっと会いたかったという女子大生、立花いとが現れるのですが。

右京区の仁和寺"御室桜"、相国寺の"鳴き龍"蟠龍図、宗旦狐、五山の送り火、と京都在住者としては馴染みの場所や行事が登場してくるのは、単純にやはり嬉しく、狭い京都市内を神堂明、立花いとの2人が謎を解くために歩いている姿が【実際に浮かんでくるような親近感】をもって読み進めることが出来ました。

一方で、フリーペーパー専門店の店主としては、いかにファンレターをもらうほどの人気連載を持つライターとはいえ、好意を隠さない【美人女子大生が突然押しかけてくる】のは些か不自然、ご都合主義的に当初感じたのですが。ラストの"どんでん返し"にて、なるほど。なるほど。と二回くる感じに納得。

気軽に読める日常系ミステリとして、また過去が原因で立ち止まった人物の再生物語が好きな人にもオススメ。

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