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カルメン

"お前さんは私のロムだから、お前さんのロミを殺す権利はあるよ。だけど、カルメンはどこまでも自由なカルメンだからね"1845年発刊の本書はフランス有名オペラの原作にして、風のように駆け抜ける【刹那的なカルメンが鮮烈な印象を残す】多才で社交的な著者が『内と外』を額縁形式で描いた傑作中編小説。

さて、カルメン。と言えば、私なんがが真っ先に浮かぶイメージは自由奔放なれど、どこか【悪女的なファム・ファタール】といったオペラに影響された視覚的イメージなのですが。そういった大幅に改変される以前の原作は未読だったので、今回ようやく手にとりました。

そんな本書は、オペラには未登場の著者自身(の願望を)を彷彿とさせるフランスの考古学者がスペインを旅行中に出会った山賊、ホセから懺悔話を聞く形式でカルメンとの悲恋が語られていくわけですが。読みすすめていて意外だったのは、カルメン自身は実は悪女というより【自立し逞しく生きる誠実な女性】といった在り方で、むしろ凡庸さと乱暴さが目立つホセの【一方的な犠牲になってしまった】と、思い描いていた先入観と真逆の印象を受けたことです。(うん。カルメンは何も悪くない)

また本書は100ページに満たない中編なのですが。この分量で描かれたからこそ、カルメンの鮮やかな魅力が文学史上でも普遍的な存在感をもって、今なおオペラや映画と様々に表現者が解釈の余地を残し、創り手を刺激しているのでは?とも思ったり。(作中では、中でも2人が一緒にいる時に、カルメンが大事なお皿を割って、カスタネットにして踊るシーンが好きですね。私は。そりゃ惚れますわ!)

オペラともまた違うカルメンの魅力を知りたい誰かへ。また文学史上でも屈指の輝きをみせるヒロインとしての描かれ方に関心のある誰かへもオススメ。

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