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文字の食卓

‪"文字の印象の違いは書体というもので、それぞれすべてに名前がある、と知ったときのおどろき。活字への憧れ。そして身近な書体が目の前から消えていったときの喪失感。それはきっと価値のあるものに違いない、と確信できたから、私は『文学の食卓』をかきはじめたのです。2013年発刊の本書は、‬DTP化により消えていく写植書体39書体を実際に使用された名文と巡る『文字と言葉』の不思議エッセイ集。

さて、本書はWEBサイト『文字の食卓ー世界にひとつだけの書体見本帳』を再構成、加筆修正した一冊なのですが、初見ではタイトルの『食卓』から何かしら【文字に纏わるメニューというか食べ物が紹介されていくのか?】と思ってしまったのですが。

【良い意味でそれを裏切って】本書では読む人の「目」を意識し【先人達が工夫し、洗練してきた写植書体たち】石井細明朝、中ゴシック、太ゴシック、ゴナ、ナール、タイポス、淡古印、本蘭明朝。。などが漫画や小説での使用例、そして著者の個人的な思い出と共に紹介されていて、なんとも不思議な読み心地でした。

また私個人も印刷業界や出版社には全く縁がない立場ですが。それでも、同じくデザイナーでもない著者の【書体一つ一つに対する感受性の豊かさや愛情の注ぎ方】またそれをやわらかに言語化する才能にも驚かされました。言われてみて気づく、普段手にし、目にする本の書体それぞれに【創り手の物語があり、意図が込められていること】その事にはっと気づかせてくれた事に人知れず感謝の気持ちを記しておきたい。

印刷に関わる全ての人。また本を手にした時やPC作業で密かに書体萌えしている誰かにもオススメ。

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