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ある奴隷少女に起こった出来事

"読者よ、わたしが語るこの物語は小説ではないことを、はっきりと言明いたします。わたしの人生に起きた非凡な出来事の中には、信じられないと思われても仕方がないものが存在することは理解しています。それでも、すべての出来事は完全な真実なのです。"1861年発刊の本書は126年後に実話として再発見されベストセラーになった驚くべき魂の物語。

個人的には、ずいぶん昔に購入したにも関わらず、表題から重たい内容を想像して積読になってしまっていた本書、ようやくこの度手にとりました。

さて、そんな本書は『小公女』や『若草物語』といった理想を描くフィクションの小説たちとほぼ同時代である一方、徹底的に【現実と立ち向かったノンフィクション】として、私たち現代人の多くがディストピア的に想像で補完するしかない、黒人が【物として売買されていた】アメリカで、南部から北部へ逃亡しながら戦った少女、母親の姿が読みやすく翻訳され描かれているわけですが。

まず同じ男性としても嫌悪感を抱かずにはいられないのは、彼女を『財産』として執拗に追いかけまわす好色な医師、フリントの存在か。囲い込む為に小屋を建てたり、他人のふりをして手紙で騙そうとしたり、徹頭徹尾、その【手口や異常性に】不快な気持ちになりました。

一方で、対照的にヒロインの行動力、自由を求める精神力には賞賛と敬意を感じる中で、浮き彫りになる【南部はもちろん、北部も含めた】統一前のアメリカの黒人に対する白人の、黒人を同じ人間ではなく、喋ることのできる『商品』として当然に眺め、扱う白人至上の社会には、やはり知識として頭で知ってはいても【掲載された実際の新聞の懸賞広告】"21歳の色白のムラートで、身長5フィート4インチ、体格が良く。。"などを見て、自分の身に置き換えて考えると心底怖ろしく、色々と考えさせられました。

移民政策に舵をきったこの国において懸念される人種差別。を心配している、あるいは社会問題として解決に関わっている全ての人にオススメ。

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