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アクロイド殺し

"このわたしは旧式ですので、古い方法を使います。小さな灰色の脳細胞だけを働かせるのです。"1926年発表の本書は名探偵エルキュール・ポアロ・シリーズの3作目にして著者の代表作の1つ、叙述トリック論争も引き起こしたミステリ史上に残る名著。

個人的には叙述ミステリに最近ハマっている事から、本書も手にとりました。

さて、そんな本書はキングス・アボットという村を舞台に【ジェームズ医師の視点で】様々な登場人物たちが語られていった後で、ある日、村の名士であるアクロイド氏が殺害され、事件が迷宮化するかと思いきや、村には引退して【カボチャ栽培に励む】名探偵ポアロがいた事から物語は真実に向けて動きだしていくわけですが。

まず、何十年間かぶりに本の中で再会した約163センチメートルのベルギー人の小男、緑の眼に卵型の頭・黒髪で、ぴんとはね上がった大きな口髭をたくわえ【尊大なまでに自信たっぷり】のポアロのキャラがとにかく良い。何だかカッコよいイメージの例えば明智小五郎とかと違って、どこかエキセントリックさがあって印象に強く残りました。(あと『ミス・マーブル』の原型になった医師の姉、キャロラインも良い)

また、本書で使われている叙述トリックは当時『読者に対して仕掛けられているトリックとしては合法的ではない』と否定されたり、逆に擁護されたりしたらしいのですが。個人的には叙述トリック作品には見事に騙され続ける私なのですが。本書に関しては『犯人』だけは、前述の【ポアロが何度か意味深にジロジロと眺めたり、語りかけてくる】事から割と早くわかったものの、その理由に関しては、様々な登場人物たちの行動の真実が明らかになった最後になって、なるほどと感じ。こうした【丁寧な人間ドラマが展開する】作品。古典的ではあっても充分に楽しめました。

叙述トリック、ミステリの名著として。また、猟奇的だったり、殺伐としていない、人間ドラマ重視のミステリ好きにもオススメ。

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